「“円高・デフレシフト”の経済に、実質賃金の減少が襲いかかった」(湯元氏)結果、「もともと景気回復に疑心暗鬼だった消費者心理が冷え込み、回復の遅れにつながった」(メリルリンチ日本証券の吉川雅幸チーフエコノミスト)。
連合が30日まとめた27日時点の今春闘の賃上げ幅は2.34%。原油安で家計の負担も和らぎ、日本経済は「8%ショック」を脱しつつあるが、17年の再増税に向けた環境整備はこれからだ。
駆け込み需要の反動減に対する耐性強化は今後の重要課題の一つだ。法政大大学院の小峰隆夫教授は、欧州の一部では消費税に当たる付加価値税の税率を比較的短期で変更する仕組みがある点を念頭に、「日本でも駆け込み需要そのものを抑える施策が有効になる」と強調する。
だが、より重要性を増すのはデフレシフトの経済構造にくさびを打つ試みだ。
眼鏡販売大手のメガネスーパーは27日、東京・白金台に新業態店「DOCK(ドック)」をオープンした。目周辺のマッサージを施すスペースに加え、生活習慣まで踏まえた商品提案が売りで、きめ細かなアイケアが必要なシニア世代をターゲットに据える。
業界の主流はレンズとフレームのセット定額販売で、激化する価格競争が業界全体の力をそいだ。だが1年前の駆け込み需要が、「日常身につける眼鏡だからこそ高品質商品の需要はなくならない」(星崎尚彦社長)との再発見を生んた。
開店初日に訪れた女性客(85)はスタッフの勧めを参考に、「想定していた価格よりいいものに決めました」と口元をほころばせた。「消費者にも安さ以外の価値に気づいてほしい」と星崎氏。自らの再発見を伝えていく必要性を感じている。