【高論卓説】納豆菌で放射能半減、お米もおいしく 戎崎俊一 (2/2ページ)

2015.4.15 05:00

 ただし、効果が安定しないのが問題で、うまくいく場合とそうでない場合があるようだ。一方、納豆菌などを散布した水田で採れたコメは、例外なくお米のおいしさを評価する「食味値」がかつてないほど向上した。この方法は、水田の土壌環境を荒らさず、コメもさらにおいしくなるので、農家が土壌改良のついでに除染作業を気軽に行うことができる。

 セシウムの除去と食味値の向上がどう関連しているのか詳細はわからない。その成否には土壌の微生物生態系の多様性が重要とみられる。農林水産省は、セシウム対策に大量のカリウムを肥料として投与することを農家に薦めている。しかし、カリウムが水田に蓄積しすぎると、その微生物生態系の多様性が失われる傾向にあるという。カリウムがだぶついてミネラルバランスが崩れてしまった田畑の土壌環境の回復にも、納豆菌など微生物資材の投入は有効かもしれない。

 この秋に、除染作業に成功した二本松農園の田からとれた新米が理研に届いた。食味値の数値どおり大変おいしいお米だった。このような素晴らしい成果に、ほんの少しだけでも自分が貢献できたことをうれしく思う。福島では、このような試みがさまざまな形で推進されていると聞く。それらが相互に競争しつつ、前に進んでいるだろう。勤勉できめ細かい日本人の特性が発揮され、農地の放射性物質除染技術が急速に進むのではないだろうかと期待している。二本松農園では、この手法を確立するための募金を募集している。

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【プロフィル】戎崎俊一

 えびすざき・としかず 独立行政法人理化学研究所戎崎計算宇宙物理研究室主任研究員 東大院天文学専門課程修了、理学博士。東大教養学部助教授などを経て、1995年より現職。専門は天体物理学、計算科学。

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