◆産地というクラスター
従来の地域振興は大企業の工場誘致が多かったが、今や大企業は海外への投資に関心が移っている。地方創生のためには、産学連携をコアに、官(地方自治体)、金(地方銀行・信用金庫)を加えた「地方創生クラスター」を作ることだ。日本史を振り返れば、江戸時代以来、全国各地にいろいろな産地というクラスター(固まり)が作られている。地方創生クラスターは、21世紀型産地のことで、地元主導で地元の人材と資源を生かすものだ。
産業界と大学は特許利用の他、共同研究や人材交流により連携を拡大する。地方自治体はビジネスマインドを持って、地方創生の事業計画を作り、旗振り役をする。地方銀行や信用金庫は、従来の担保主義をやめ、事業性を評価して融資する方式に変えて、地元企業にリスクマネーを供給する。
地域の産学官金が運命共同体であることを認識し、踏み込んだ協力を進めることにより、地方創生が初めて実現する。日本再生のために急がなくてはいけない。
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【プロフィル】荒井寿光
あらい・ひさみつ 東大法卒、ハーバード大大学院修了。通商産業省(現経済産業省)入省、特許庁長官、通商産業審議官、初代内閣官房・知財戦略推進事務局長、世界工業所有権機関政策委員を歴任。退官後、日本初の「知財評論家」を名乗り知財立国推進に向けて活動。著書に「知財革命」「知財立国」。70歳。長野県出身。