G7開幕を前に記者団の取材に応じる日銀の黒田総裁=27日、ドイツ・ドレスデン(共同)【拡大】
輸出と輸入を合わせた貿易規模でも、中国はフランス、オランダに次ぐ3番目の相手国だ。好業績に沸く自動車業界では、最大手フォルクスワーゲン(VW)の中国での出荷台数が14年で368万台となり、ドイツを含む西欧向け出荷台数をしのいだ。ドイツ政府高官は「消費市場としても投資市場としても重要な相手」と評する。
こうした中、ドイツは3月、英国に続いてAIIBの創設メンバー入りへ名乗りを上げた。ドイツ政府は「詳細が決まる前から関与するアプローチ」(高官)と説明するが、外交筋は「不参加ならば、国内製造業から袋だたきに遭いかねなかった」と解説する。
米国との関係悪化に対する憂慮は薄い。ドイツ政府は、センサー技術で受注から出荷までの生産プロセスをビッグデータ化し、効率化を図る「インダストリー4・0」の技術を中国市場に売り込みをかける構えで、4月には州政府が中国でシンポジウムを開催した。IT大国・米国はライバルとの位置づけだ。
欧州全体でも、米国とEUの包括的な自由貿易協定となる環大西洋貿易投資協定(TTIP)の交渉が停滞する中、AIIB参加は「中国との関係強化を米国に意識させ、揺さぶりをかける交渉手段」(関係者)といった側面がある。
もっともAIIBは、首席交渉官会合で理事会を常設しないことが決まったほか、中国が事実上の拒否権を持つことになり、中国の思惑が反映された格好だ。
G7はAIIBに適正な組織運営などを引き続き求める方針だが、第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「欧州各国は中国に口うるさく言うつもりがないようだ」と指摘しており、実効性を伴う合意は見通せない。