主な経済指標【拡大】
29日に出そろった4月の経済指標は、雇用環境や生産活動が明るさを増す一方で、個人消費の低迷が長引いていることが浮き彫りとなった。ただ、個人消費は月ごとの変動が大きい。今春闘では基本給に加え、一時金(ボーナス)などが引き上げられたこともあり、今後は上向く可能性が高い。民間アナリストの多くは、「景気は今後も緩やかに回復する」との見方を崩していない。
菅義偉官房長官は同日の会見で、経済情勢について「雇用情勢は着実に改善している。賃金上昇につながるので、経済の好循環に向けて動き始めている」と強調した。
有効求人倍率や失業率は、景気の緩やかな回復基調を受けて医療・福祉や宿泊・飲食サービスを中心に求人が増え、改善につながった。失業率は3・3%まで低下し、「完全雇用に近い」(日銀幹部)との見方も出ている。
こうした雇用関連指標の改善には、企業の生産活動の持ち直しも寄与した。4月の鉱工業生産指数は99・1となり、前月に比べ1・0%上昇した。プラスは3カ月ぶりで、15業種のうち9業種で前月を上回った。スマートフォン向け部品の輸出が伸びたほか、電力会社などからの受注が好調だった電気機械工業も伸びた。
円安を追い風に、米国向けを中心に輸出も上向きつつある。今後は輸出企業を中心に、生産回復が徐々に進む見通しだ。雇用情勢はさらに改善が見込まれる。
これに対し、個人消費は低迷が続いている。4月の家計調査は、消費税増税に先立つ駆け込み需要の反動で落ち込んだ昨年の水準を下回った。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「昨年の反動減が大きかった分、消費は回復するとみていた」と打ち明ける。
ただ、所得環境そのものは改善している。自営業などを除いたサラリーマン世帯の実収入は2・0%増の47万6880円と、19カ月ぶりに増加した。今後ボーナスの増加などで賃金上昇の実感が広がれば「消費は上向く」(明治安田生命保険の小玉祐一上席エコノミスト)との見方が多い。
政府は5月の月例経済報告で、日銀は金融政策決定会合で、それぞれ個人消費を上方修正した。一方で円安がさらに進めば、輸入物価の上昇も懸念される。景気の本格回復には、賃上げの恩恵のさらなる拡大が必要だ。(万福博之、飯田耕司)