4月の毎月勤労統計調査で、実質賃金が2年ぶりに前年同月比プラスになったことは、安倍晋三政権が目指すデフレ脱却に向けての一里塚となる。ただ、増加幅は0・1%増にとどまり、個人消費を十分に刺激できるかには課題も残る。
実質賃金がプラスに転じたのは、消費税増税から1年が過ぎ、前年同月比の物価上昇率が緩和されたことに加え、名目賃金が順調に伸びたことが主因だ。今春闘では、経団連の4月の集計ベースの賃上げ率が2年連続で2%を超えた。
デフレ脱却を確実にするため、政府は企業収益の改善を設備投資や賃金上昇、消費の拡大につなげる「経済の好循環」を目指している。賃金上昇はその鍵を握るとされるが、春闘での大幅な賃上げに続き、夏の賞与も2%を超える妥結額(経団連調査)が見込まれるなど、継続的な道筋ができつつある。
今後は、この賃金上昇に伴う家計の可処分所得の増加が、個人消費に結びつくかが焦点だ。ただ統計では4月の消費者態度指数が、5カ月ぶりの前月比マイナスと消費マインドは上向いておらず、4月の家計調査(2人以上世帯)でも、1世帯当たりの消費支出は実質で前年同月比1・3%減と、個人消費は様子見を決め込んだままだ。