■値下げ加速、消費者に恩恵
コメは現行の1キロ当たり341円の高関税は維持されるが、米国と豪州向けに無関税の輸入枠を新設する。枠は協定発効当初で計5万6000トンで、13年目に計7万8400トンにする。上限までの輸入義務はないが、上限に未達なら、民間への売り渡し価格に上乗せされる輸入差益を、一時、15%引き下げるなど輸入促進措置が導入される。
日本は1993年に合意した関税貿易一般協定(ガット)の多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)の結果、ミニマムアクセス(最低輸入量)として年間約77万トンのコメを無関税で輸入している。この枠に米国が生産に力を入れる加工用中粒種の枠6万トンを設ける。
両国から輸入される主食用コメは、大半が外食などの業務用に回る。低価格の輸入米の流入が増えれば、レストランのメニューやせんべいなど米菓の値下げにつながり、外食産業や消費者は恩恵を受けられそうだ。
一方、近年のコメの需要は年間約8万トンペースで減少し、価格は下落傾向が続く。政府は新たに輸入で増えた分を備蓄米として買い入れ、米価や農家に影響が出ないよう対策を取る。だが、農家保護のための財政負担が拡大し、農家の体質強化につながらないと懸念されている。
国内需要の約9割を輸入する麦は、政府が一定の枠内(小麦で年間574万トン、大麦で同137万トン)で輸入する国家貿易と、枠外の関税率(小麦で1キロ55円、大麦で同39円)は維持。国家貿易の枠内で、輸入差益を発効から9年目までに45%削減する。米国と豪州、カナダに国別枠として計19万2000トンを新設する。