中国の2015年実質国内総生産(GDP)成長率が政府目標の7%を割り込んだことで、日銀が追加の金融緩和に踏み切るとの観測が高まり始めた。19日の東京株式市場で日経平均株価は4営業日ぶりに反発したが、リスク回避の動きは収束していない。前回の追加緩和(平成26年10月末)前の水準「1ドル=115円・日経平均株価1万6千円」が政府・日銀の“防衛線”とみられている。
「現時点で追加緩和の必要はない」
15日の衆院予算委員会で、参考人として出席した日銀の黒田東彦総裁がこう言い切ると、円相場は1ドル=118円台から117円台に急騰し、市場は失望感をあらわにした。
黒田総裁は19日の参院予算委員会で、「できることは何でもやる。必要な政策手段は十分に有している」と大慌てで追加緩和の可能性を示唆するなど火消しに追われた。
金融市場の混乱は中国の成長鈍化が主因だ。この日のGDPで「当面の悪材料は出尽くした」(株式アナリスト)との安心感から、日経平均株価は前日比92円80銭高の1万7048円37銭で取引を終えた。
だが、当局による人民元安誘導で中国からの資金流出が続く中、投資家心理は改善しにくく、円高・株安が進むリスクは高まっている。円高・株安は輸出企業の収益を悪化させる。企業が設備投資や賃上げに及び腰になれば、家計マインドを冷やし消費の回復も遅れてしまう。
さらに、米国の利上げで世界の金融市場から投資マネーが流出、ニューヨーク原油先物相場は1バレル=30ドルを下回る。国内では電気代やガソリン代が安くなるが、日銀が「28年度後半ごろ」とする2%の物価上昇目標の達成には“悪材料”となる。
みずほ証券の末広徹氏によると、1バレルあたりの油価が日銀想定の50ドルから30ドルに下がると28年度の消費者物価(生鮮食品を除く)上昇率を0・53%押し下げる。日銀が昨年10月に予想した28年度の物価上昇率は1・4%。この試算を当てはめると0%台に落ちる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鹿野達史氏は「日銀が手をこまねいたままでは、金融市場の混乱は収まらない」と強調。今月28~29日の金融政策決定会合で1年3カ月ぶりの追加緩和に踏み切る可能性は高いと予想した。(藤原章裕)