核開発をめぐって国際社会から経済制裁を受けてきたイラン。1月にそれが解除されたことで、同国は本格的に国際社会に復帰した。人口が8000万近い地域大国だけに、「最後の未開拓市場」として各国経済界から熱い視線が向けられている。
イランから日本へは自動車産業を中心にラブコールが活発化している。2月下旬、イラン政府から派遣された投資誘致団によるセミナーが都内で開かれたのでのぞいてみた。強く印象に残ったのは、イランの代表団の半数近くが女性だったことだ。イランでは大学生の6割が女性で、公務員や医師、教師などには女性が特に多いそうだ。
2014年にフィールズ賞を受賞したマリアム・ミルザハニ氏はその象徴だ。同賞は数学のノーベル賞といわれ、女性が受賞したのは初めてだった。
彼女は学部教育をイランのシャリフ工科大学で受け、その後に米ハーバード大学で博士号を得た。イランは国内で世界最高レベルの理数系人材を育成することができ、かつ女性にもその門戸が開かれているということだ。イラクとの戦争や経済制裁のもと、女性の労働参加に切実なニーズがあったのだろう。
最近イランと対立を深めているサウジアラビアも宗教色が極めて強いお国柄。女性に自動車の運転が認められていないことで有名だ。だが、同国にも変化の波が押し寄せている。国会に相当する国王への進言機関「諮問評議会」でも女性議員の数が全体の2割を占めるようになった。現在は女性の大学進学率は男性を上回っているという。
東京大学の辻上奈美江・特任准教授は週刊東洋経済2月27日号で「これらの変化のきっかけとなったのは、米中枢同時テロ(01年)と『アラブの春』(11年)であった」と指摘している。性差別的な政策が国際社会からの批判にさらされ、急ピッチで政治・社会改革が進んだのだ。
この流れはさらに加速することになりそうだ。原油安はサウジの財政を逼迫(ひっぱく)させている。IMF(国際通貨基金)は、原油価格が1バレル=50ドル前後で推移した場合、あと5年で外貨準備が枯渇すると警告した。
そこでサウジでは同国の国営企業で世界最大の石油会社であるサウジアラムコの上場など、思い切った政策を打ち出しつつある。その青写真となったとみられるのは、世界的コンサルティング会社、マッキンゼーの調査部門がまとめたリポートだ。
その中で改革が成功した場合のゴールとして示されているのが、30年に国内総生産(GDP)を現在の2倍にするという目標だが、達成の大前提は新たに600万人のサウジ人を労働市場に参加させることだ。13年にはサウジの被雇用者1100万人のうち56%を占める外国人への依存度を減らしてサウジ人、特に女性の労働参加を大きく増やす。
経済的な行き詰まりの中で「女性の活躍」が期待され、社会の変化を促すというのは、どこの国でも当てはまることなのかもしれない。
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【プロフィル】西村豪太
にしむら・ごうた 「週刊東洋経済」編集長代理 1992年に東洋経済新報社入社。2004年から05年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。昨年12月に『米中経済戦争 AIIB対TPP』(東洋経済新報社)を上梓。46歳。