全国農業協同組合連合会(JA全農)が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)発効をにらみ、輸出用のコメ産地の育成に乗り出す方針を固めたことが3日、分かった。2016年産から宮城、福島、新潟、石川など9県程度で生産者の協力を得て、収穫量の多い品種の栽培でコストを削減する取り組みを実施する。従来品種より価格を抑えて競争力を強化し、アジアや欧州に輸出する方針だ。
JA全農は、コメの総輸出量を15年度の約1500トン(見込み)から今後3年間で6倍超の1万トンに拡大する計画を掲げている。16年産以降、多収品種の産地や作付面積を9県以外も念頭に順次拡大し、輸出の柱に育てることを目指す。
これまで日本のコメは高品質だが、価格の高さが輸出拡大のネックと指摘されてきた。このためJA全農は昨年、宮城と福島2県の生産者に協力してもらい、計15ヘクタールで多収品種の試験栽培を実施。肥料の量を増やすなど栽培方法も工夫した結果、食味はやや落ちるものの、面積当たりの収量は全国平均を2~3割上回り、生産コストは3~4割削減することができた。
こうした結果を受け、16年産から産地を広げて本格的な取り組みに着手する。各都道府県のJA全農本部や経済農業協同組合連合会(経済連)、地域農協を通じて生産者に参加を呼び掛けており、作付面積は昨年の5倍程度に拡大する見通しだ。
TPPでは、米国産とオーストラリア産のコメを無関税で輸入する枠が新設され、発効13年目には計7万8400トンまで拡大されることが決まっている。5日にはTPPの承認案と関連法案の国会審議が始まる。コメの国内市場が頭打ちとなる中、海外の安いコメとの競合が懸念されることから、逆に輸出で海外に打って出るなど「攻めの農業」への転換が課題となっている。