回想録が香港で出版されたのは、死から数日後の先月末。戚本禹は回想録が印刷されていることを聞かされて息を引き取ったという。
回想録の一部とされる「江青同志を回想する」という文章は、ネット上などで公開されている。戚本禹はその中で、江青は人々からいかに悪く言われようとも、夫である毛沢東の顔に泥を塗るようなことは一切しておらず、「彼女は間違いなく女性の英雄であり、毛主席が彼女を選んだのは間違ってはいなかった」と述べている。
この文章を読む限り、戚本禹は亡くなるまで、毛沢東と江青に対する尊敬の気持ちを持ち続けたといえよう。毛沢東と江青によって翻弄された人生であったにもかかわらずである。
文革研究者の丁凱文は、戚本禹には歴史と自己に対する反省が欠如しているのではないかと批判している。戚本禹は頑(かたく)なに文革への信念を保持し続けたのである。(敬称略)