地球温暖化の主因と考えられる二酸化炭素(CO2)の排出量削減は地球規模の課題であり、自動車の燃費性能を高める政策は、各国戦略の重要な一部である。国内でも「エコカー減税」や「グリーン化特例」として法制化され、政策の重要な役割を担う。この結果、低燃費性能は消費者の購買決定の最大の関心事項となった。走行時の経済性に加え、税負担の大幅な軽減につながるからだ。
しかし、三菱自動車の軽自動車での燃費不正、スズキの大規模な燃費測定法令違反は、公式燃費(いわゆるカタログ燃費)を基準におく燃費政策の問題をあぶり出した。エコカー減税は、実燃費との差異が非常に大きいとされるJC08モードによるカタログ燃費を基に、最も性能が高い車種を上回るよう燃費目標基準値を設定する「トップランナー方式」を採用している。
このトップランナー方式には賛否両論があるが、恩恵を強く受ける軽自動車とハイブリッド車が、国内販売の実に60%を占めるという市場の“ガラパゴス化”を進めたことも事実だ。
より実燃費に近づく燃費試験モードの国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)の導入を促進し、カタログ燃費と実燃費とのギャップの解消へ決着をつける時期に差し掛かってきたといえるだろう。
日本的なトップランナー方式を続けるか、欧州的な企業別平均燃費(CAFE方式)に向かうべきか、真のエコ化を促す燃費政策の枠組みとは一体何か、改めて考え直す契機となってきたといえる。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。