政府が打ち出した大規模経済対策と相まって、一度は止まりかけた安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の歯車を再び回転させるとの期待がかかっていた29日の日銀による追加金融緩和。政府や市場からの圧力が強まる中、日銀は長期国債ではなく、上場投資信託(ETF)の購入額拡大という苦肉の策を取った。ただ“本命”の「量」と「金利」での切り札は温存したことで、うまく切り抜けたとも言える。
同日の東京金融市場は日銀の決定を受けて、株や為替が乱高下した。昼過ぎに速報が流れた直後は物足りなさから、日経平均株価が大きく下落。ただ、終値は前日比92円43銭高の1万6569円27銭と反発した。円相場も一時1ドル=102円台後半まで円高が進んだが、午後5時現在は前日比1円07銭円高ドル安の1ドル=103円61~64銭まで戻した。
市場では「今回温存した分だけ、日銀は量的拡大を含めた『バズーカ緩和』を11月以降に打ち出す可能性も残されている」(野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジスト)といった受け止めも広がった。長期国債の買い入れペースの増加やマイナス金利幅の拡大といった、本命の切り札を手元に残したことで、今後の政策発動に望みをつないだためだ。