政府・与党は平成29年度税制改正に向けた議論を9月から始める。政府税制調査会が専業主婦世帯などの税負担を軽減する「配偶者控除」の見直しなど所得税改革について同月上旬に具体策づくりに着手、自民党税制調査会も今秋議論に入る。28年度改正の消費税の軽減税率に続き、29年度も国民の財布に直結するテーマが最大の焦点になる。
「年内には所得税の控除制度全体の見直しの具体策を示したい」。財務省幹部はこう意気込む。
政府税調は昨年、所得税が今の経済社会に合わなくなった実態を綿密に調査。税負担を軽くする控除制度を見直して、結婚し子供を産み育てる若年層や低所得者層の負担を軽減する方向性を打ち出した。今年は控除をどう変えるかに関して具体案をまとめる。
控除の再設計は、低所得者に恩恵が大きい税額控除という仕組みの採用や、家族構成などの事情に応じた控除を手厚くするなど広範にわたる。しかも、税制改正前後で税収がほぼ変わらない税収中立が前提。納税者に損得が生じるのは不可避で、国民が納得できる丁寧な議論が必要になる。実際の税制改正は具体案を示した上で、数年がかりの作業になる公算が大きい。
一方、妻の収入が103万円以下なら夫の課税所得から38万円差し引ける配偶者控除の見直しは、29年度改正で決着する可能性がある。同控除は女性の働く意欲を損ないかねないとして政府税調が一昨年に集中的に議論し、具体案を提示済み。妻の収入にかかわらず一定額を夫の収入から差し引く「夫婦控除」を税額控除方式で導入する案が有力視される。
8日の経済財政諮問会議でも民間議員が年内に結論を出すよう求めた。増税になる世帯の抵抗感は根強いが、政府が推進する「働き方改革」と深く関わる税制であり、見直しの機運は醸成されつつある。
29年度改正はビール類の酒税の格差見直しも大玉の一つ。現在350ミリリットル缶当たりの酒税はビールが77円、発泡酒47円、第3のビールで28円。自民党税調では税額を数年かけて全体の税収が変わらない55円程度に一本化する案を検討してきた。だが、発泡酒と第3のビールは増税になって消費者の反発が強まる恐れがあり、参院選を控えた28年度改正では早々に見送られた。増税色のある改正は政治的な思惑が働きやすく、年末に向けどこまで議論が進むかは予断を許さない。
景気への影響が大きい自動車分野では、購入時にかかる自動車取得税など現行4種類ある車体課税について、低燃費車の税を軽くするエコカー減税が来年3月末に期限切れになる。個人消費が振るわない中、減税をどのような形で延長するかが課題になる。
法人税は、28年度までの2年間で法人実効税率20%台への引き下げなどの抜本改革を断行した。29年度は研究開発減税のうち来年3月末に期限が切れる措置の延長など小粒になりそう。「パナマ文書」問題で関心が高まった課税逃れ対策は強化される見通しだ。(万福博之)