そんな中で、エスカレーターが速いなどということは、取るに足らない問題ともいえる。つまずいて足の骨を折るより、バイクで転んで頭蓋骨が割れるほうがよっぽど危険なのだから。それだけ、アジア新興国と日本では基準値が違うのだ。
このエスカレーターが速いという一例から、アジア新興国のビジネスにおけるリスク感覚を学ぶことができる。日本には「リスクは悪」「避けて通る」という感覚がある。米国は「リスクはあって当たり前」という前提で対処する。
一方、アジア新興国は「リスクをリスクと思わない」もしくは「リスクをリスクと思えない」のである。
「安全が完全に確保できないならエスカレーターは動かなくていい」という日本の感覚でビジネスをしていては、アジア新興国のビジネススピードにはまったくもってついていけない。仮に、彼らと協業をしたとしても、同じ足並みで進んでいくことはなかなかできない。
各国の国民性や慣習を注意して見れば、エスカレーターの速度からでも、日本とアジア新興国の感覚の違いを学ぶことができる。日本企業にとって、コンプライアンス(法令順守)を重視しながらも、この差をどう埋めるかが、事業展開の要点の一つである。
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【プロフィル】森辺一樹
もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。10年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中! www.spyderagent.com/podcast
>>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe