20カ国・地域(G20)首脳会議は、世界経済のリスクが議論された。懸念されるのは、米国の追加利上げによる新興国経済への影響だ。人民元などは対ドルで弱含んでおり、投資家が新興国から資金を引き揚げる動きを加速する恐れがあるためだ。
人民元は英国の欧州連合(EU)離脱決定後に下落し、7月には節目の1ドル=6.7元を割り込み、2010年秋以来の安値をつけた。
その後、値を戻したものの、8月下旬に米連邦準備制度理事会(FRB)による9月の追加利上げ観測が浮上すると再び元安が進行した。
米労働省が発表した8月の雇用統計が市場予想を下回ったことで、9月の利上げ観測は後退した。だが、年内の早い段階で利上げに踏み切るとの見方はくすぶる。
年明けに起きた上海株の急落など金融市場の混乱は中国経済の減速に加え、昨年12月に米国が利上げに踏み切ったことで、新興国への投資マネーが逆流したことが一因だった。アジアなどの新興国は通貨安になると輸入品などの物価が上昇、投資の縮小で景気を悪化させる懸念がある。
欧州も英国のEU離脱や金融機関の不良債権問題で不透明感が根強く、資金が引き揚げられかねない。
G20ではこれまで新興国からの資本流出防止に向けた検討を進めてきたが、効果的な対策を打ち出せていないの現状だ。(杭州 田村龍彦)