日銀は9月10日現在、日本株を10兆5000億円余り(ETFが88%)保有している。東証1部の時価総額510兆円余の約2%にあたる。今後もETFを年間6兆円買い続ければ、日銀の日本株持ち株比率は毎年、約1%のペースで上昇する。個々にみると、既に日銀が実質的な大株主になった企業が続出していると報じられた。日銀の動きはコーポレートガバナンス・コード(企業統治の規範)、日本版スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)にも抵触しかねない。
コーポレートガバナンス・コードの補充原則の中には、「政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである(抜粋)」との記述がある。しかし、中央銀行の日銀は方針を開示しない。スチュワードシップ・コードは機関投資家なら投資先企業の企業価値を高めるため、投資先企業の経営モニタリング、議決権行使の方針と行使結果の公表などをすべきだと説く。機関投資家ではない日銀にとって、スチュワードシップ・コードの理念と精神は無縁なのだろうか。
「日銀の大量保有銘柄は避けろ」。海外の日本株ファンドの間でこんな声が多く上がり始めたと聞く。「日銀のETF買い増しで日経平均は1000~2000円上がる」などとはしゃいでいる時ではない。日銀のETF買いが続けば浮動株は枯渇し、売買が成立しにくくなる。日銀が市場を闊歩(かっぽ)する“官製相場”は乱高下を招く。出口が見えない日銀のETF買いは株式市場の機能の低下と、破壊をもたらしかねない。
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【プロフィル】加藤隆一
かとう・りゅういち 経済ジャーナリスト 早大卒。日本経済新聞記者、日経QUICKニュース編集委員などを経て2010年からフリー。67歳。東京都出身。