ただ、ドイツから技術移転したトランスピッド方式は、通常の電磁石を用いるもので、磁力が弱く浮力も1センチ弱にとどまるため、現在の430キロから大幅なスピードアップは困難とされる。振動も激しく、乗り心地は良くない。既存の高速鉄道と大差がないことから、中国以外で採用されることはなく、ドイツでは2011年に開発を終了した。
これに対し、JR東海のリニアは、超電導電磁石を用いた超電導方式。ニオブ・チタン合金を液体ヘリウムでマイナス269度まで冷却し、電気抵抗がゼロになる超伝導状態を作り出し、強力な磁力で車体を10センチも浮き上がらせ、時速600キロ超を達成した。
中国がどのような独自技術で時速600キロを目指すのかは不明だが、超電導の制御には高度な技術の蓄積が必要で、そう簡単には日本に追い付けない。
日本と中国は高速鉄道のインフラ輸出で激しくしのぎを削っている。中国は破格の条件を提示し、米国やタイ、メキシコ、ベネズエラなどで次々に受注を獲得し、昨年はインドネシアで日本の新幹線に競り勝った。一方で、今年6月にラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道建設で、米国が中国との合弁を解消。メキシコやベネズエラの計画は頓挫し、インドネシアでも停滞するなど、逆風にさらされている。2011年に浙江省で起きた40人の死者を出す衝突脱線事故のダメージも大きく、安全性を不安視する声はなお大きい。
これに対し、日本は米国のワシントンとニューヨークを結ぶ路線に超電動リニアを売り込むなど巻き返しを図っている。
中国が国家プロジェクトとして600キロリニアの開発をぶち上げたのは、高速鉄道の輸出が相次いで行き詰まっていることへの焦りの表れともいえそうだ。