経済産業省幹部は「トランプ氏はビジネスマンだ。恐らく思想に基づいて主張しているわけではない。実利を説けば分かってくれるはず」と期待を寄せる。
一方、TPPは発効要件である域内GDP(国内総生産)の85%以上の国が批准しなくても、合意内容自体は消滅しない。トランプ氏が就任後に翻意するか、4年後の選挙で推進派の新大統領が誕生すれば、発効する可能性は残る。
SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミストは「短期的には、保護主義的な政策の方が(日本にとって)影響が大きい」と懸念する。このため、元来は自由貿易に積極的な共和党の議員に働きかけ、まず関税引き上げなどを防ぐとともに、TPPは再交渉による合意内容の修正を認めて米議会の承認を促すべきだと指摘している。(田辺裕晶)
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■TPPをめぐる主な発言
・トランプ氏
米製造業の命取りになる。大統領就任日に脱退を宣言する
・マコネル米上院院内総務
年内に議会に提出されることは確実にない。トランプ氏が現在の協定に反対していることは明らかだ
・ニュージーランドのキー首相
(年内に米議会で)承認される可能性はゼロに近い
・アーネスト米大統領報道官
オバマ大統領は年内の議会承認が最善だと確信している
・菅義偉官房長官
12カ国の首脳が早期発効を目指すと確認している。オバマ大統領も本年中の議会手続きに全力で取り組んでいる