
名古屋市で記者会見する日銀の黒田総裁=14日午後【拡大】
日銀の黒田東彦総裁は14日、名古屋市で記者会見し「企業収益は極めて高水準で、失業率はどんどん下がっている。賃金が上昇していく合理的な理由がある」と述べ、来年の春闘での賃上げに強い期待を示した。
日銀が掲げる2%の物価上昇目標の実現には賃金の改善が必要で、会見に先立つ中部経済界との会合でも「物価上昇を前提とした賃金決定などに取り組むことは、日本経済に不可欠な条件だ」と述べ、企業経営者らに賃上げを促していた。
米国のトランプ次期大統領が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの脱退を表明していることに関しては「TPPは日米が中心となって世界最大規模の自由貿易圏を作る画期的なものだ」と強調。実現しなければ「大きなメリットが失われる可能性がある」として、議会承認などの手続きを進めるよう要望した。
トランプ氏の経済政策については「十分承知しておらず、先走ったことを言うのは適当でない」と前置きしつつ「市場は歓迎ムードで、株もドルも上がっている。共和党が上下両院とも過半数を占めたので、適切な経済運営で世界経済に好ましい影響をもたらすことを期待する」と述べた。
黒田氏は会合で物価情勢について「足元の弱さにもかかわらず、物価上昇に向けた勢いは維持されている」と指摘。2018年度ごろの物価目標達成に向け「必要と判断した場合は政策の調整を行う」とあらためて表明した。