
記者会見する日銀の政井貴子審議委員=21日午後、さいたま市【拡大】
日銀の政井貴子審議委員は21日、日銀が17日に初めて実施した「指し値オペ」について、「国債市場で円滑にオペの意図が伝わったという印象を持っている」と述べ、金利上昇を抑制する有効な手段であるとの見解を示した。さいたま市内で開いた講演後の記者会見で述べた。
米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利を収めて以降、米長期金利の急騰につられて、日本国債の利回りも上昇傾向にある。金融緩和効果を守ろうと、日銀は17日、指定した利回りで国債を無制限に買い入れて金利を操作する指し値オペに踏み切った。
これに対し、市場では「日銀による牽制(けんせい)」との見方が広がった。21日の東京市場でも、長期金利の終値利回りはプラス0.025%と前週末から0.010%低下した。
今後の経済・物価見通しに関する最大の懸念として、政井委員は「海外経済の不確実性の高まりを背景として、グローバルな金融市場が急変するリスク」を指摘した。具体的には、トランプ政権の経済政策運営の方針のほか、英国の欧州連合(EU)離脱決定に向けた交渉が見通せないといった問題が挙げられる。
こうした中、政井委員は「金融市場の変動が個人や企業の踏みとどまっているマインドに悪影響を及ぼし得る」と述べた。日銀としても、猛威を振るう「トランプ相場」への警戒心をあらわにした格好だ。
これに先立つ講演で、政井氏は、日銀が掲げる2%の物価上昇目標の実現には金融緩和だけでなく、政府と民間による成長力の強化が重要だと述べた。