
米国大統領選で当選確実となり、支持者の前に登場したドナルド・トランプ次期大統領。同氏の勝利を受け、新興国の通貨安が進行している=11月9日、ニューヨーク(AP)【拡大】
米大統領選での共和党候補、トランプ氏の勝利を受けて円安が進んでいるが、新興国でも総じて通貨安が進行している。トランプ次期大統領は減税や大規模なインフラ投資を打ち出しており、景気回復や国債発行増を織り込んで米金利が上昇していることが米ドルの独歩高と、米ドル以外の通貨の下落要因となっている。
新興国通貨の為替変動には、トランプ政策との関連性によって濃淡がみられる。メキシコは、移民の制限や北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し懸念が強く、通貨ペソが大きく売られ為替レートが下落している。経常赤字や政治の不安定要因を抱えるトルコ、ブラジルなどの通貨も下落が目立つ。東南アジアでは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を予定しているマレーシアの通貨リンギットの下落幅が比較的大きい。
その一方で、対米関係の改善を通じて経済制裁の緩和も期待されるロシアの通貨ルーブルはそれほど売られず、中国の人民元は対ドルレートで約8年ぶりの最安値を更新したものの、中国人民銀行(中央銀行)の買い支えもあり、下落幅は比較的小さい。このほか、自国通貨の為替レートを米ドルと連動させるドルペッグを採るベトナムや中東諸国の対ドルレートはほとんど変動していない。
市場は、来年1月20日に米大統領に就任するトランプ氏の政策を先読みしており、政策転換が緩慢にとどまる場合など、為替にもいったん反動の動きが出る可能性がある。
しかし、長期的にはTPPなど自由貿易協定の動きが停滞し、貿易訴訟の頻発などを含めて保護主義的な動きが強まる可能性が高く、投資マネーが高金利の米国へ還流する動きと相まって、新興国通貨には下落圧力が続く可能性がある。(編集協力=日本政策投資銀行)