さらに、米国とメキシコの関係を決定的に悪化させたのが、トランプ氏の公約でもとくに有名となったメキシコ国境での「壁」の建設だ。メキシコからの不法移民の流入が米国人の雇用を奪っているというのがトランプ氏の主張だが、メキシコ側は猛反発した。
メキシコは、隣国であり最重要の貿易パートナーである米国との関係が冷え込めば、それを埋める大国の存在がどうしても必要になる。ペニャニエト政権は、そもそもスキャンダルさえなければ前進したとみられる高速鉄道をはじめ、インフラ整備にも潤沢なチャイナマネーを期待しているとみられる。
一方、中国も、米国の裏庭にあたる米州各国への働きかけを近年強めている。習近平国家主席は、トランプ氏が当選した米大統領選直後の11月にペルーやエクアドルなど中南米を歴訪し、関係強化をアピールした。内向きなトランプ政権の誕生に困惑する米州各国との距離を縮め、パイプを太くする狙いがみてとれる。(柿内公輔)