二つ目はモノを一つのモノとしてだけではなく、周囲の環境のなかでどうであったか、まとめて頭の中に入れておくことだ。あるモノが美しいかどうかは、モノが存在する環境により左右されることもある。またはモノをみる順序によっても変わる。
こうしたことを考えながら、ぼくが教育のなかで強調された想像力を駆使することと、人物や風景を描くことはどのような関連があったのだろうと思う。どこかで見た山と川の風景の記憶を辿り、正確には記憶していない部分を補うことが想像力だったのだろうか。
現実を把握するには数字でおさえろ、とよく言われる。確かに数字で表現できるものは数字でおさえるのが大事だ。しかしながら数字でおさえ切れないものも世の中には多い。
その場合、想像による補完も活用できるが、なによりもまず観察によって現実をつかみ取る覚悟がどうしても必要になる。
マルと楕円を区別することで現実はより正確にとらえられ、掘り下げるべきネタはさらに豊かになる。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。