やや、大げさな表現を使えば、その跳躍はロジカルシンキングに対する「背徳行為」ではないか、とのうしろめたさがつきまとう。せっかく開墾された土地に足を踏み入れたのに、また未墾のカオスの場に逆戻りするのかとの面倒臭さもある。
言うまでもないが、すべては錯覚である。新しいことをやるなら整理された土地などないし、何らかの道筋がはっきりしているなど稀だ。それがためにロジカルに段取りするわけだが、そうしてできた道が向こうの森に繋がるかどうかは誰にも分からない。
ここでふと思う。「跳躍」というプロセスを公認してくれるロジックを、日本の企業社会ではより求められているのかもしれない。「跳躍」が必要なことなど周知のことなのに、「跳躍」を許容しない土壌ができてしまったために、う回路が必要になったのではあるまいか。
えらくややこしい迷路に入り込んでいる。
こういうことをつらつらと考えていると、イタリアのデザインマネジメント理論を紹介する意義は、デザインマネジメント理論そのものに限らない、という気がしてくる。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。