もう一つは、教育の無償化を拡大するといいながら、義務教育の教員定数の削減を進めていることである。子供の数に応じて、教員の定数管理を行うことは、現在の子供を取り巻く環境を考えるとあまりに時代遅れだ。今の子供たちは、ネットやゲームといった仮想空間の環境と、働く母親の増加という家庭環境に置かれている。家庭の教育力の低下からも、学校の役割や負担は大きくなる一方である。
情報教育や外国語など、教える内容も幅広くなっている。しかし、少子化という理由から、教員定数は毎年3000人超減少している。今年度もいじめ問題や特別支援教育に当たる「加配教員」は増員の予定だが、通常の教員は削減で、差し引きマイナスであることには変わりない。教育の重要性を説きながら、教育費を削減し、さらに別の方法でその無償化を進める。この矛盾をどう説明するのか。
こども保険も、教育国債も国民の新たな負担であることは間違いない。負担の公平性の観点からも問題がある。国費を投じる範囲を広げるのであれば、そこで学ぶ子供たちに何を求めるかを明らかにすることは当然だ。
合わせて、社会保障費に上乗せし、新たな保険料を発生させるのなら、高額な終末期医療や増加傾向にある診療報酬や残薬の問題など、先に改善すべきことは山ほどある。それをせずに国民負担を安易に増やすことは、政治の役割を果たしていないことと自覚してほしい。
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【プロフィル】細川珠生
ほそかわ・たまお 元東京都品川区教育委員。ラジオや雑誌でも活躍。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。千葉工業大理事。