基礎研究の重要性、若手研究者への支援-。昨年、ノーベル医学生理学賞を受賞した東京工業大の大隅良典栄誉教授が繰り返し訴えてきたことだ。政府は限られた予算を効果的に使うため「選択と集中」を旗印に、結果や利益に直結しやすい応用研究を重視し競争的資金を投下。その結果、地道な基礎研究にしわ寄せが来ている。
◆国立大への支給減額
文部科学省によると、2014年の日本の科学研究費は総額19兆円で米国、中国に次ぐ3番目。だがその8割が応用研究に軸足を置く民間企業によるものだ。残り2割が国から大学や研究者などへの支給で、この割合は近年ほぼ変わらない。
中でも国から国立大に支給される「運営費交付金」は、研究費など用途が自由で国立大の基礎研究を支えてきた。しかし、04年度は約1兆2400億円だったが、16年度には約1500億円減少。大学も研究費を十分に配分できなくなった。
政府は01年策定の「第2期科学技術基本計画」で「今後50年でノーベル賞30人以上」と目標を掲げた。01年から16人受賞したが、多くが20年以上前の成果。日本がこつこつと基礎研究に取り組んできたあらわれだ。
短期的に成果が望める応用研究ばかりに資金が割かれる今の風潮が続くと、今後もこのペースが続くか疑問が残る。
一方、人材の流動性を高め若手支援を強化する案も浮上する。英科学誌ネイチャーは3月、科学への投資が停滞した結果、日本の科学研究は失速していると指摘した。01年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏も「ヒト・カネ・モノを世界から調達する必要がある。その魅力と呼び込む力を付けるべきだ」と話す。