
1日、ホワイトハウスで地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したトランプ米大統領(UPI=共同)【拡大】
--トランプ氏はパリ協定が米経済に打撃を与える旨述べています
トランプ氏はパリ協定を順守すれば、2025年までに270万人の雇用が失われ、40年までには国内総生産(GDP)で3兆ドルを失うなどとし、米国に不公平とする一方で、中国などを利すると指摘しましたが、その主張は正鵠(せいこく)を射たものと思います。
パリ協定は途上国も含め、すべての国の温室効果ガス削減への取り組みを定めた枠組みではありますが、実際、各国の削減目標達成の難易度には大きな差があるのが実情です。米国や日本などは「排出量」の基準年比削減率を目標値として掲げるため、経済成長の抑制につながる可能性があります。一方、世界一の温室効果ガス排出国である中国は、「GDP当たり排出量」の基準年比削減率を目標値として定めているため、2030年頃まで排出量を増やし、石炭火力発電所の建設などを推し進めることも可能です。排出削減のための負担の観点から見て、同協定の不公平性は誰の目にも明らかです。
--日本の取るべき態度については
パリ協定からの離脱には3年以上を要するため、米国が親条約である「国連気候変動枠組み条約」から離脱する可能性も取り沙汰されています。いずれにせよ、今回の離脱表明はもとより、トランプ氏はすでにオバマ前大統領が導入した温暖化対策の全面的な見直しを命じた大統領令に署名していることから、米国が経済成長と安全保障を重視した政策にシフトしていくのは確実とみられます。今後、中国とEUが影響力を拡大するであろうパリ協定に日本が残留するならば、その結果、日本だけが大きな制約を課され、国益を大きく損なう危惧があります。