
浴室の掃除をするダスキンのフィリピン人女性の従業員=6月、大阪市内のマンション【拡大】
一方で仙台市は保育士不足の解消に向け、通常は年1回だけ行う県の資格試験と別に、特区内限定の試験を16年秋に実施した。100人超が合格し、11人が既に保育所勤務を始めたか内定したという。市の担当者は「一定の効果があった」と胸を張る。
「指定の維持が難しくなるとの危機意識を持ってほしい」。5月に開かれた特区諮問会議で議長の安倍首相はこう強調した。名指しは避けたものの、規制緩和の新たな提案や事業の少ない沖縄県と新潟市に向けられた発言だった。
沖縄県は特区指定から3年が経過したが、規制緩和を活用したのは4事業と10地域で最少。新潟市も創業を目指す外国人の在留資格要件を緩和したものの、利用者はゼロだ。政府関係者は「このままでは地域指定が取り消される可能性がある」という。
自治体に規制緩和に精通した人材が不足していることが不振の一因だ。「改革派の首長を支える体制が作れず、既得権益とのぶつかりに苦戦してしまう」(諮問会議の民間メンバー)との指摘もある。
特区制度に詳しい日本総合研究所の湯元健治副理事長は「より踏み込んだ政府の規制緩和に加え、特区側の工夫が必要だ」と指摘。地方税の免除など地域で可能な措置も組み合わせて、制度との相乗効果を発揮するよう提案している。