NZ政権交代、大筋合意に黄信号 「TPP10」での発効検討も

新政権を率いることになる労働党のジャシンダ・アーダン党首(AP)
新政権を率いることになる労働党のジャシンダ・アーダン党首(AP)【拡大】

 ニュージーランド(NZ)で環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の見直しを公約に掲げた新政権の誕生が決まり、11月の大筋合意に黄信号がともっている。NZは早期合意に向け積極的な立場を取ってきた先頭集団の一角だけに、慎重派に転じれば反発は必至。日本は米国に加えNZも離脱する事態を念頭に、残り10カ国による発効を検討する。

 TPPを担当する茂木敏充経済再生担当相は20日の記者会見で「NZの新政権でTPPへの対応を含む政策を調整する。まずはそれを見守りたい」と述べた。

 9年ぶりに政権を奪還する労働党は「外国人による中古住宅の購入禁止」を打ち出し、高水準の投資自由化を掲げたTPP協定の再交渉を迫る構え。新政権に協力するニュージーランド・ファースト党と緑の党も協定には反対の立場だ。一方、TPP参加各国は今月末に東京近郊で開く首席交渉官会合で、米国の離脱を踏まえ協定の一部項目を棚上げする「凍結」について大詰めの調整を行う。

 NZは協定の自由化水準を保つため日本などと一緒に凍結項目を最小限に抑えるよう協力を求めてきた。そのNZが、凍結に止まらず内容の修正を求めるようになれば、各国の交渉姿勢に悪影響を与えかねない。

 日本はNZの再交渉要求には応じない構え。交渉筋は「ついてこられないならNZ抜きで合意する」と指摘。11月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開くTPP首脳会合で大筋合意するため、NZの意向にかかわらず意見集約を進める方針だ。

 TPPはNZの主力輸出品目である乳製品の市場拡大に貢献する。離脱すれば国内企業の強い反発が避けられず、「再交渉は難しいと新政権が理解すれば戻ってくる」(経済官庁幹部)と楽観視する声もある。(田辺裕晶)