海外情勢

中国のデジタル技術にドイツ警戒 迫られる国家運営の再考

 ドイツの連立与党、キリスト教民主同盟(CDU)で、2021年のメルケル首相退任後の新しい国の在り方をめぐり、国家運営方法を見直す機運が高まっている。きっかけは、昨年のCDU議員団による中国訪問だった。華為技術(ファーウェイ)や騰訊(テンセント)など現地巨大企業を視察した議員らは中国の技術進歩を目の当たりにし、自分たちの地位低下を痛感。旧態依然とした経済モデルでは取り残されるとの危機感を募らせた。

 ノイシュタート計画

 議員団は国家運営の根本的な再考を促す決意でベルリンに戻った。メルケル首相が16年に及ぶ任期を終えて21年に退任するのを控え、党内の動きは最高潮に盛り上がっている。

 彼らの考えをまとめた著書『ノイシュタート』(「新しい国家」と「新たなスタート」の語呂合わせ)は、昔ながらの伝統に縛られた行政を合理化したデジタル国家に転換する、事実上のポスト・メルケル時代のマスタープラン(基本計画)だ。中国からの挑戦に触発されつつも、臆することなくその成功から教訓を得ており、メルケル首相の後継者を狙うノルトライン・ウェストファーレン(NSW)州のラシット州首相ら多くのCDUの重鎮から支持されている。

 アイデアの多くは訪中時に集められ、なかには急進的なものもある。ビットコインなど仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーン(分散型台帳技術)にのっとった欧州単一通貨ユーロの改革やドイツ全土での人工知能(AI)の活用実施、データに基づく意思決定を優先した省庁の解散を提案している。

 ところで、訪中議員団の一人で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)内の議会グループ副リーダーでデジタル政策を担当するネイディーン・ショーン氏によると、議員らは視察ツアーで繰り返し、「ドイツが選ばなければならないときが来ている」という中国側のメッセージを聞いたという。ショーン氏自身、企業幹部から中国の技術が進歩し、米国との不和が深まる中、ドイツは2大国のどちらに付くかを選ばなければならない時が来るという話を聞いた。

 見限られた均衡政策

 ドイツは1世代にわたり米中2大国の間でバランスを取ることを経済的成功の要としてきた。だがそうした均衡政策がいとも簡単に見限られ、欧州製造業の技術力や競争力の強化がはね付けられたことが、ショーン氏や同僚のトーマス・ハイルマン氏にとって警鐘となった。

 従来の欧州と米国の同盟関係はトランプ米大統領の下で弱体化している。また独製造業の屋台骨の自動車産業は電気自動車(EV)への移行が進む中、混乱に見舞われており、伝統的なエンジニアリング産業はデジタル技術に追いやられている。独ハイテク企業の中では数少ない成功例だった決済サービス企業のワイヤーカードはドイツ時間の6月25日、ミュンヘン地方裁判所に破産手続きを申請した。

 一方、CDU議員らが独自のビジョンを思い付くきっかけとなった中国の全体主義は、西側諸国の民主主義の原則とは相反する。ショーン氏は「われわれは独自路線を見いださなければならない。欧州がもっと強い自信を持つことが必要だ」と話す。

 また、中国西部の新疆ウイグル自治区で少数民族をモニターするために配備された広範な監視技術が広く報告されているが、ショーン氏は「人々の管理や支配にデータを活用する国家は望まない」と強調。ラシット氏も「ほとんどの中国人は安心感を得るために国家によって監視され、支配されることを気にしていないようだが、われわれの欧州での取り組みとは異なる」と語った。(ブルームバーグ Arne Delfs)

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