海外情勢

豪が国挙げてサンゴ礁の白化修復 大学など研究機関がプロジェクト

 オーストラリア北東部沖にある世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフで、気候変動による海水温の上昇を最大の原因とし、サンゴの死滅につながる「白化現象」が進んでいる。サンゴを救おうと国を挙げての対策が進んでいる。

 白化現象は、サンゴの中から植物プランクトンの「褐虫藻(かっちゅうそう)」が追い出され、栄養分や酸素の供給が受けられずに白くなること。海水温上昇などでサンゴがストレスを受けると起き、この状態が続くとサンゴは死んでしまう。

 「初めてグレートバリアリーフ全域を深刻な白化現象が襲った」。今年3月、1000カ所以上のサンゴ礁を2週間かけて上空から調査したジェームズクック大のテリー・ヒューズ教授は驚愕した。グレートバリアリーフで大規模な白化現象が確認されたのは過去5年で3回目。今年は全体の25%が深刻な状況という。

 1998年と2016年の白化は、南米ペルー沖の太平洋赤道海域で海面水温の高い状態が続くエルニーニョ現象によって引き起こされた。だがヒューズ氏は「夏がどんどん暑くなるにつれ、もはやエルニーニョが大規模白化の条件ではなくなってきた」と話す。南半球では夏本番だった今年2月の付近の海水温は、1900年の観測開始以来、最も高かった。

 環境が回復すれば、サンゴは再び褐虫藻を獲得して健全な状態に戻るが、最近は白化の頻発で回復が妨げられているという。

 危機感を強めるオーストラリア政府は4月、サンゴの修復に向けた研究に1億5000万豪ドル(約111億5850万円)を投じると発表。資金提供を受けた大学などの研究機関が40以上のプロジェクトに取り組んでいる。

 3月にはサザンクロス大の研究者らがグレートバリアリーフ上空で、人工的に気候を操作する「クラウド・ブライトニング」と呼ばれる方法を世界で初めて実験した。

 海水を上空に噴霧して低空の雲に混ぜ、太陽光を多く反射させてサンゴに届く熱を軽減する方法だ。同大学講師のダニエル・ハリソン氏は「雲と混じり合って反射率を高める海塩の結晶を、1秒間に数百兆個作ることができた」と胸を張る。今後は環境リスクを考慮しながら実験の規模を拡大するという。

 オーストラリア連邦科学産業研究機構などのチームは、サンゴから褐虫藻を分離して培養。4年間かけて高温にさらすことで熱に強く育てた。この褐虫藻を与えられた若いサンゴは耐熱性が高いことが分かったと5月に発表した。成長したさまざまな種類のサンゴで、さらに実験を重ねる考えだ。(シドニー 共同)

【用語解説】グレートバリアリーフ オーストラリア北東部沖に約2300キロにわたって連なり、総面積は約35万平方キロの世界最大のサンゴ礁群。海岸線沿いに約600の島が点在し、さまざまな海洋生物や鳥類の宝庫で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産となっている。ダイビングスポットとしても人気が高い。近年、地球温暖化による海水温上昇や、水質悪化の影響でサンゴの成長率低下が広範囲で報告されている。(シドニー 共同)

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