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日銀が導入する地銀・信金再編に補助金の新制度 「裁量逸脱」の指摘も 

 日本銀行が、経営統合に踏み切る地方銀行と信用金庫に事実上の補助金を出す異例の政策を導入する。背景にあるのは、新型コロナウイルスの影響などで利益が急減する地銀の深刻な経営環境だ。生き残りをかけて思い切った決断をする地銀に「アメ」を用意し、地域経済への貢献を期待するが、日銀の判断で金融機関を選び、お金を出す制度には日銀関係者からすら「中央銀行の裁量を逸脱している」との声が漏れる。

 「地銀の経営を何とかしないといけないという問題意識は数年前から持っていた。いろいろな策を検討していた」。日銀関係者は舞台裏をこう明かす。検討は数年前から始まり、昨年から議論が本格化した。政府が地銀の統合を柔軟に認める特例法制定を成長戦略に盛り込むなど、地銀存続に向けた取り組みを加速させたことも背景にある。

 日銀は「マイナス金利政策などの金融緩和は効果が副作用を上回っている」との立場だが、地銀の収益は悪化する一方だ。放置すれば取引先への融資が円滑に行われなくなる恐れがあった。

 日銀幹部は「なかなか動かない地銀の背中を押したかった」と話す。今年9月には地銀再編に前向きな菅政権が発足し、政府との共同歩調を印象付けるタイミングでの発表となった。

 「地域経済は人口減少などの構造的な要因に加え、新型コロナウイルスの影響で厳しさを増している。これを支える地域金融機関の経営基盤の強化が重要だ」。日銀の高口博英金融機構局長は10日、報道陣の取材に強調した。

 仮に全ての地銀と信金が新制度を利用すれば、日銀から追加で受け取ることができる金利の規模は年400億~500億円に上る。日銀は保有する国債の利息収入などを原資に充てる。

 伝統的な中銀の政策は民間銀行への貸し出しなど、返済されることが前提で、大規模な支出を伴うのは異例だ。日銀は「日銀法に基づいて政府の認可を取るので問題ない」と説明する。

 ただ、政府が検討している地銀などの経営統合に対する交付金制度は、関連法案が国会で審議されるのに対し、日銀の新制度は正副総裁や審議委員が出席する政策委員会という「密室」で決まった。金融政策決定会合と異なり、将来にわたっても議事録が開示される予定はなく、委員会内で異論があったのかどうかすら分からない可能性が高い。

 SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「日銀がやればスピードは早いが、実質的には金融機関の経営支援であり、本来は時間をかけてでも国会審議を経て政府が実施すべき話だ」と指摘する。

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