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官民挙げ「脱炭素」大競争突入 洋上風力・EVに日本は立ち遅れ気味

 政府は、脱炭素社会に向けた実行計画をまとめ、環境と経済の両立を狙う国際的な大競争のスタートラインに立った。有望分野の洋上風力発電は欧州が先行し、脱ガソリン車の鍵を握る電気自動車(EV)開発でも日本は立ち遅れ気味だ。対抗するには官民挙げた取り組みが不可欠で、劣勢からの難しい挑戦が始まった。

 世界の資金呼び込み

 「政府が環境投資で一歩踏み出す。3000兆円といわれる世界の環境関連の投資資金を呼び込み、雇用を生み出したい」。菅義偉首相は昨年12月24日の経団連会合で、脱炭素化は日本企業にとって好機だと訴え、産業界に「発想転換」を呼び掛けた。

 同月25日に発表した実行計画は「グリーン成長戦略」と銘打ち、14の重点分野で高い数値目標を掲げた。洋上風力は2040年の発電能力を最大4500万キロワットまで引き上げることを目指す。「欧州より30年遅れのスタートだ。長期間かけて育ててきた産業に半分程度の期間で追い付こうとしている」。業界関係者からは、野心的な目標設定を評価する声が上がる。

 ただ、具体的な道筋づくりはこれからだ。風車の製造はゼネラル・エレクトリック(米国)やシーメンス(ドイツ)など欧米メーカーが世界シェアの大半を握り、日本勢の存在感は薄い。政府は組立工場を誘致して関連部品を供給することで、目標の国内調達率6割を実現する青写真を描くが、地元への経済波及効果は限定的なものにとどまる可能性がある。

 産業界は脱炭素化に協力姿勢を示しつつ、事業の過度な制約を警戒する。同月17日、報道各社の取材に応じた日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、EVの急速な普及を強いられれば「ビジネスモデルが崩壊してしまう」と予防線を張った。

 実行計画の検討過程では、EVと燃料電池車(FCV)などに限定した新車販売目標を掲げる案も浮上した。だが最終的に、30年代半ばまでにガソリンと電気を併用して走るハイブリッド車(HV)を含めた「電動車」に転換するとの内容で落ち着いた。自動車業界からの巻き返しがあったとの見方もある。

 欧米勢はEVを次世代技術の中核と見定め、開発競争にしのぎを削っている。経済産業省幹部は、日本が強みを持つHVへの依存は当面必要だと認めつつ、「日本メーカーの対応が遅れれば、いずれ致命傷になりかねない」と危機感を口にする。

 首相交代で踏み込む

 「安倍1強」といわれた前政権では産業界への配慮もあり、踏み込んだ脱炭素目標に及び腰だった。菅首相は就任後間もない昨年10月の所信表明演説で、50年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする方針を宣言した。政府関係者は「政権が代わらなければ宣言はなかったかもしれない。日本が世界に乗り遅れない最後のチャンスだった」と話す。

 今回の実行計画は官邸主導ではなく、梶山弘志経産相を中心としたチームで練り上げた。ある経産省幹部は「官僚としての仕事冥利(みょうり)に尽きる」と語る。この計画を土台に確かな実行力を発揮できるのか。11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、国際評価が下されることになる。

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