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「商社3位が定着」伊藤忠、三菱商事の後を追う三井物産の社長交代に秘められた意図 (1/3ページ)

 堀健一次期社長は道半ばの社風改革で名門復活に挑む

 三井物産は昨年末、今年4月1日付けで堀健一専務執行役員が社長になる人事を発表した。6年前に並み居る上司をおさえて、「32人抜き」でトップについた安永竜夫社長は代表権のある会長に就く。

 安永社長は6年前、飯島彰己前社長から「若い感性で、既存の考えにとらわれないで社内の風土を変えてもらいたい」という狙いを込めて大抜擢された。だが、今や、同社は伊藤忠商事にも遠く引き離され、業界では「3位」が定位置になっている。名門復活へのハードルは高い。

 「ようやく安永氏を社長の座から引きずり落とすことができた」--。12月に入り、三井物産の幹部OBたちは安堵した。

 次期社長を審議する同社の指名委員会でのことだ。安永社長は「新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻化する中、ここで逃げたくない」と訴えてきた。

 昨年12月でようやく60歳になったばかりの安永社長がOBなどからの説得に折れたのは12月に入ってからだった。「社長任期6年」は同社の不文律。OBたちはこの不文律の遵守を迫った。その背景には「格下の伊藤忠に業績を引き離され、業界で存在感が薄まる一方の物産を安永氏にこれ以上任せることは承服できない」というOBらの一致した思いがあった。

 セブン‐イレブンとの提携を模索するが一蹴され…

 新型コロナウイルス感染拡大による景気減速で、物産の稼ぎ頭の金属・資源の市況が低迷。ほかに収益をあげる事業もない。そんな中、景気の変動に左右されにくい生活産業を軸に据える伊藤忠は、三井物産の倍の利益を稼ぎ出す。

 安永氏も社長就任当初、長年の懸案である「非資源」事業の拡大を目指し、伊藤忠傘下のファミリーマート、三菱商事のローソンに対抗すべく、セブン‐イレブン・ジャパンとの提携などを模索した。しかし、業界トップのセブンは「何も物産の助けを得なくてもうちの棚は埋まる」(セブン‐イレブン幹部)とこれを一蹴。セブンのバックヤードで商品の売れ行きをチェックしたり、容器を作ったりする「裏方」の立場から関係を深めることはできなかった。

 安永氏が自らの成果として強調するヘルスケア事業も「収益貢献という意味ではまだ迫力不足だ」(大手証券アナリスト)。

 不祥事でリストラに追われた東芝が売却した東芝メディカル(現・東芝メディカルシステムズ)も米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と組んで買収に名乗りを上げたが、キヤノンや富士フイルムホールディングスなどに早々に競り負けた。

 累計でおよそ3000億円を投じて手に入れたアジア最大の病院グループ、IHHヘルスケア(マレーシア)も、不幸にも新型コロナウイルスの感染拡大で来院客数は伸び悩んでいる。IHHの子会社の株式売却などで益出しはしたものの、ヘルスケア事業の純利益は2020年3月期で284億円と、まだ全体の1割にも満たない。

 名門の威光を取り戻せない責任は、安永氏だけではない

 そんな安永氏も2018年3月期に純利益で4184億円と過去最高益を記録するが、それは資源価格の上昇によるものだった。食品や小売りに加え、さらには金融事業など「BtoC(消費者向け事業)」まで矢継ぎ早に手を伸ばす伊藤忠や三菱商事に、最後まで追いつくことはできなかった。

 なかなか取り戻せない名門の威光。その責任は安永氏一人にあるのだろうか。

 「多くの罪は会長の飯島彰己氏にある」と三井物産社内ではささやかれている。「自らの院政を敷くために32人抜き人事を決めた」(三井物産幹部)というのがその理由だ。

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