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「オフィスのコロナ除染」をコソコソやる日本の特殊事情 深夜や営業時間外を指定 (1/3ページ)

 オフィスや飲食店などで従業員にコロナ感染者が出た際、業者に除染の依頼をする事案が増えている。ジャーナリスト・僧侶の鵜飼秀徳氏は「九州の特殊清掃業者を取材したところ、除染する時間を深夜や営業時間外に指定されるケースも多いそうです。周辺の企業や住民に知れられぬよう、感染の隠蔽を図るような心理が働いているのです」という--。

 オフィス、飲食店、個人宅…コロナ感染拡大で除染依頼が急増

 コロナ感染症が拡大するにつれ、感染源の除染を手がける特殊清掃業者への依頼が急増している。

 特殊清掃業「友心まごころサービス」(福岡県久留米市)の代表、岩橋ひろしさんはこの1年、数多くのコロナ感染の現場をクリーニングしてきた。その除染作業からみえてきた3つの問題点を指摘してくれた。

 それは、「感染の隠蔽」「悪質業者による情報漏洩のリスク」、そして「“ゴミ屋敷”の中での高齢者の孤独死」だ。岩橋さんは「こうしたコロナを巡る間接的な問題にも、国や行政は早急に手立てを整える必要がある」と警鐘を鳴らしている。

 岩橋さんの本業は特殊清掃だ。特殊清掃とは、孤独死や自殺・他殺の凄惨な現場をクリーニングすることである。腐乱した遺体の体液などが残る現場は細菌だらけで、感染症に冒される危険性を秘めている。

 「目や防護服の隙間などから細菌が入ると、極めて危険です。特にウイルス性肝炎にかかったご遺体からの感染はわれわれにとっても命取りになるため、完全に防御をした上で臨みます。コロナの除染には、この技術を応用しています」

 建築中の戸建て住宅にコロナ除染の依頼が入ったワケ

 コロナ感染症が流行する前から、岩橋さんは防護服やゴーグル、医療用のN95マスクで完全防御した状態での室内除染の経験を数多く踏んできた。そのため、特殊清掃の技術を生かしたコロナ除染にニーズが集まっているのだ。

 この1年、独自の除染技術をもつ岩橋さんの会社には、コロナ感染者が出たオフィスや飲食店、ホテル、美容院、整骨院、遊興施設、学校、コールセンター、個人宅などからの除染依頼がひっきりなしに入っている。依頼主は九州が多いが、時には関東など全国に出張に出向くこともある。

 変わったところでは先日、建築中の戸建て住宅の除染の依頼が入った。施工する大工さんに感染が発覚したからだ。多数の感染者を出している米軍基地の除染も手がけるが、こちらは守秘義務があり、詳細は言えないという。

 感染者を“非国民”視するから広がるコロナ感染の隠蔽

 岩橋さんはコロナ除染の現場を通じて、多くの厄介な問題点が見えてきたという。

 「現場感覚では、あちこちに感染源が飛び火している感じですね。共通するのは依頼主が、まるで犯罪者になったかのように事実を隠蔽する行動に出ていることです。コロナはインフルエンザのように誰にでも感染する可能性があるのに、社会全体が感染者を“非国民”のような扱いにしてしまう。そのことで、感染の事実を隠そうとする心理が働く。むしろ、社会不審がコロナを広げているとさえ、思います」(岩橋さん)

 実際、「奥歯にモノがつまったような」依頼が増えているという。「オフィスの消毒をお願いできませんか。コロナが出たわけじゃないんですけどね……」

 岩橋さんは直感的に「コロナ感染が疑われる」と判断し、「コロナ感染者が出た場合の除染は、正直に申告してくださいね」と告げる。だが、依頼主は明らかに挙動不審で、否定も肯定もしないという。

 現場に下見に行くと、オフィスには誰もいない。「コロナ感染者が出たことに対して、会社内で箝口令が敷かれている可能性があります……」。岩橋さんは防護服を着込み、万が一の感染に備えて慎重に作業を進める。

 除染の作業の進め方はコロナ除染も、そのほかの除染も変わらないが、コロナ除染の場合、使用する薬剤の濃度を通常の2.5倍ほどにしている。そのため、正直に申告してもらわないと、除染効果が得られない場合があるという。

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