海外情勢

インド、国産ワクチン輸出で布石 貿易・安保で米政権と関係強化探る

 インドのモディ政権は1日までに、南米ブラジルと北アフリカのモロッコ向けに国産の新型コロナウイルスワクチンの輸出を開始した。これに続きサウジアラビアや南アフリカにも輸出する。インド国内で海外向けの医薬品供給体制構築を急いでおり、この機をとらえ米バイデン政権との間で貿易や安全保障面関係を強化したい考えだ。

 強く交渉再開望む

 インドが輸出したのは、製造量で世界最大の印ワクチンメーカー、セラム・インスティチュート・オブ・インディアが生産する英製薬大手アストラゼネカのワクチン。少なくとも10億回分を製造する計画だ。

 インドは、セラムが製造した「コビシールド」と印同業バーラト・バイオテック・インターナショナルが開発したワクチンを使用し、1月16日に国内での接種を開始。20日にはブータン、バングラデシュ、ネパール、ミャンマー、モルディブ、セーシェルの近隣6カ国への輸出を開始した。インド外務省によると、スリランカ、アフガニスタン、モーリシャスにも規制解除を待って輸出する。

 インド産アストラゼネカのワクチンは1回の接種が5~10ドルと低価格で、英国やベルギー、中東諸国やアフリカからも引き合いがある。インドは輸出用ワクチンについて1カ月当たり5億回分への増産が可能と説明している。

 インドのシュリングラ外務次官はブルームバーグのインタビューに答え、「インドで生産したワクチンの世界での需要は非常に大きい。海外企業の供給網の一部がインド産ワクチンに切り替えられたが、これにとどまらず、製薬・医療分野で世界の企業とインド企業が協力する機会が増え、製造・研究開発における協力関係に発展することを望んでいる。世界中からのワクチン供給依頼に積極的に応えてきたが、この先アフリカ、南米、太平洋諸島の数カ国に加え、国連にも販売する」と語った。

 同次官は、ワクチン輸出を機に米国との間で、医薬品、機密技術、鉱物の供給をめぐる関係を強化したいとの考えも示した。米国とは、包括的な貿易交渉につなげることを念頭に一部貿易についての交渉再開を強く望んでいると語った。

 中国と軍撤退協議

 米国はインド最大の貿易相手国で2019年の2国間貿易額は1500億ドル(約15兆7000億円)に上る。

 同次官はインド太平洋での海上安全保障とテロ対策についても、バイデン政権との関係強化に意欲を見せ、「中国とは国境係争地からの軍撤退の実現に向け協議を続けており、高官レベルでは協議を継続し両国にとり最善の解決策を得るために可能なことは全て行うことで了解ができている」と述べた。軍事・外交レベルでの交渉は数回にわたり行われたものの、解決に至らず、ヒマラヤ山脈の印中国境の係争地帯には数千人規模の軍が駐屯し、昨年5月以来にらみ合いが続いている。(ブルームバーグ Archana Chaudhary、Rishaad Salamat)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus