海外情勢

石炭・LNG最大輸出先から「離婚届」 豪資源業界、対日戦略分岐点

 菅義偉首相が2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標を打ち出したことに、オーストラリアの資源業界が衝撃を受けている。温室効果ガスを排出する石炭や液化天然ガス(LNG)などの燃料の最大の輸出相手国が日本だからだ。「ポスト化石燃料時代」を見据え、クリーンな水素エネルギーの輸出を急ぐ動きが加速する可能性も出てきた。

 失いつつある行き場

 「日本のゼロ目標はオーストラリアの化石燃料への離婚届」。オーストラリアの地元紙は、菅氏が所信表明演説で脱炭素社会の実現を宣言したことをこう伝えた。民間調査機関「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)のプロジェクト担当者は「オーストラリアの石炭は急速に行き場を失いつつある」と指摘した。

 オーストラリア外務貿易省によると、同国産の石炭、LNGの最大の輸出先は日本で、18~19年の金額ベースでそれぞれ年間約200億豪ドル(約1兆6200億円)規模。日本にとっても石炭、LNGともにオーストラリアが最大の輸入先で相互依存状態だ。いずれも日本では主に火力発電の燃料に使われている。

 米国のバイデン大統領も50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする公約を掲げるなど50~60年のゼロ目標が世界の潮流。だが石炭産業を重視するオーストラリアは30年までに排出量を05年比で26~28%削減を目指すとするものの、ゼロ目標は設定していない。

 首相は強気崩さず

 「わが国の政策は他国に左右されない」

 モリソン首相はこう述べ、さらに「将来の輸出については心配していない」と、他国のオーストラリア産石炭やLNG依存は当面続くと強気な見通しを示すが、資源業界には危機感が漂う。

 オーストラリアの気候変動特使を務めたこともあるハワード・バムジー氏は地元メディアに、ゼロ目標は日本が産業構造を変革しようとしていることの表れだと指摘。「世界は変わりつつあり、われわれも変化を担わねばならない」と化石燃料依存に警鐘を鳴らす。

 一方でオーストラリアは30年までに温室効果ガスの削減に資する水素産業を創出し、世界的な水素大国を目指す「国家水素戦略」を昨年策定。15年以降、水素プロジェクトとサプライチェーンに1億4600万豪ドル以上を拠出。昨年11月17日の日豪首脳会談では、水素エネルギーの協力推進で一致した。

 南部サウスオーストラリア州で水素事業を展開するオーストラリアン・ガス・インフラストラクチャーグループの幹部、クレイグ・デレイン氏は「日本市場への水素供給に非常に興味がある。ぜひ日本のパートナーと組んでみたい」と期待を示した。(シドニー 共同)

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