海外情勢

もろ刃の米1.9兆ドル対策 景気過熱リスク、サマーズ氏ら懸念相次ぐ

 バイデン米大統領と政権の経済チームは1兆9000億ドル(約200兆円)に上る大型追加経済対策の必要性を訴えるのに当たり、新型コロナウイルス禍との闘いで今は大胆に行動すべきときだとの見解でエコノミストが一致していると主張してきた。

 だが、サマーズ元財務長官やダグラス・ホルツイーキン元議会予算局(CBO)局長をはじめとする複数の著名エコノミストおよび過去の民主、共和両党政権で要職にあった元政策当局者らはこの1週間、政権の経済対策の規模について疑問を投げ掛けた。金融市場の一部の経済ウオッチャーからも同様の声が上がっている。

 需給ギャップの3倍

 こうした人々は、米経済に追加支援が必要である点自体は否定しない一方で、その規模を非常に大きくすることには潜在的コストが伴うと強調する。経済面では大幅なインフレ加速や株式市場でのバブルのリスクを挙げ、政治面ではインフラ支出や気候変動対策などより長期的な優先課題への対応で今後の財政出動に対する議会の意欲が弱まる可能性を指摘している。

 経済対策の規模についての疑問の幾つかの背景にあるのは、経済の現状と新型コロナ禍がなかった場合に想定される経済活動との差である需給ギャップだ。CBOの推計によれば、2020年10~12月期(第4四半期)の需給ギャップは約6650億ドルだった。政権の対策の規模はその約3倍に上る。

 政権の追加経済対策の規模に疑問を呈している経済学者の中で最も意外な存在は恐らくサマーズ氏だろう。現在ハーバード大学教授のサマーズ氏はクリントン政権で財務長官、オバマ政権で国家経済会議(NEC)委員長を歴任し、数十年にわたって民主党の政策立案者の重鎮となってきた。

 サマーズ氏はブルームバーグ・テレビの番組や米紙ワシントン・ポスト(WP)への寄稿で、規模が小さ過ぎるリスクの方が大き過ぎるリスクより重大だという点でバイデン政権当局者に同意。09年のオバマ政権当時に、自身がその策定で中心的役割を果たした7870億ドル規模の経済対策についても、もっと大きな規模のパッケージを実現していれば、その後の経済情勢は一段と良好なものとなっていただろうと認めた。

 インフレ圧力を誘発

 その一方でサマーズ氏は、野心的な経済対策に伴うリスクをバイデン政権の経済チームは認識する必要があると主張。WP紙への寄稿で「通常のリセッション(景気後退)のレベルを超え、第二次世界大戦時のレベルに近い規模のマクロ経済対策は、過去1世代に経験することがなかったようなインフレ圧力を引き起こす可能性がある」としたうえで、「リセッションを招かずに急激なインフレを抑制することはこれまでよりさらに困難ではないかと心配している」と指摘した。

 イエレン財務長官は7日、CNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のインタビューで、あまりにも急速なインフレ高進は配慮が必要なリスクだと認めつつも、そうした危険が現実化したとしても、政策当局者にはそれに対処する手段があると話した。

 現在アメリカン・アクション・フォーラムのプレジデントを務めるホルツイーキン氏も現時点でインフレを特に不安視していない。同氏が懸念しているのは金融が不安定になるリスクだ。潤沢な手元資金によって株価や他の資産価格が持続不可能な水準に押し上げられ、00年の株式バブル、07年の不動産バブルのように、やがては相場急落につながる事態を憂慮している。(ブルームバーグ Rich Miller)

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