海外情勢

リトルガイの反乱の行方占う、小口投資家VSヘッジファンド 鍵は2点 

 降って湧いたように勃発した小口投資家とヘッジファンドのバトル。どのような結末になるのかと思案している人も多いだろう。

 その答えは次の2点にある程度かかっている。一部銘柄をショート(空売り)していたヘッジファンド、こうした株式を買い上げる小口投資家、双方の取引を仲介する業者の3つの当事者グループの中で、特に無秩序なポジションの巻き戻しが起きた場合にまず白旗を揚げるのはどこか、そして規制当局と政治家がどのように対応するかだ。

 最初の白旗はどこか

 「リトルガイ(平凡な人々)の反乱」とも評される今回の事態は、情報プラットフォームやデータ、簡単に使える商品・取引アプリが重なり合って生じたものであり、これらはいずれも金融の民主化といったより一般的な現象に寄与してきた。

 ハイテクやビッグデータ、比較的シンプルな形態の人工知能(AI)に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)や他の機関をうまく取り込んできたように見える金融のエスタブリッシュメント(支配者層)から取り残され、不利な条件に置かれてきたとの何年にもわたる小口投資家の不満も火に油を注いだ。

 きっかけはヘッジファンド、いわゆるスマートマネーを中心とした典型的な実力者を著しく脆弱(ぜいじゃく)にする戦略の発見という形で起きた。この戦略は最もショートが目立つ銘柄を買い上げてショートスクイーズ(踏み上げ)を引き起こし、弱気ポジションの手当てを余儀なくさせることを期待する場当たり的な動きをもたらし、特に米ゲームソフト小売りチェーン大手ゲームストップ株のケースでうまく機能した。

 「ペイントレード(痛みを伴う取引)」にさらされたのは何も売り持ちしていたヘッジファンドだけではない。仲介役を担っていた業者も強まる圧力に身を置いていたことが分かった。慌ててバランスシートの防衛や慎重なガイドラインの維持に走ったからだ。

 3者はまだゲームの真っ最中だ。最初にどこがノックアウトされるのかはかなり見通しにくい。

 歴史的には一部銘柄の急騰をあおってきた小口投資家が最も狙い撃ちのリスクにさらされる。個人の資本には限界があるためで、プロ集団のヘッジファンドを相手にしているならば特にそうだ。この場合は小口投資家が被る損失にもかかわらず、金融システムへの影響は比較的小さいと考えられる。

 当局対応の予測困難

 だが、2010年代初頭の「アラブの春」でまず世界的な注目を集めた現象のように、ソーシャルメディア、今回の場合は小口投資家に人気の掲示板「レディット」が、分散した投資家を集めて共通目的のために強力な勢力に仕立てることが可能になった。ヘッジファンド側はこうした新たな勢力に立ち向かい、ゲームにとどまるために追い証への対応強化で資金調達を余儀なくされ、一部はショートポジションの手じまいを迫られた。

 どのシナリオが顕在化するとしても、規制当局や政治家がある程度関与してくると見込まれるが、どの要素に軸足を置くのかは予測が難しい。今回の事態は、世界のメディアの関心を呼ぶ「ダビデとゴリアテ」さながらの対決という側面だけではない。金融の民主化、金融新技術主導による市場階層の破壊、相場の全般的なバリュエーション、規制・政治的な対応、市場構造そのものが作用する可能性がある。(ブルームバーグ Mohamed El-Erian)

 (モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus