海外情勢

欧州観光は今夏も閑古鳥 “苦境あと1年”備えをEUが警鐘

 南ヨーロッパの多くの場所で観光は重要な産業だ。ギリシャ経済の21%、ポルトガル経済の17%を占める。大抵の場合、他に産業がない地域の主な雇用主であり、住民の家計に重要な収入をもたらし、地元経済を支えている。だがこうした地域の観光地では、今夏のビジネスの先が見通せない状況が続く。新型コロナウイルスの感染抑制に期待のワクチンの接種ペースは鈍く、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は閑古鳥が鳴く年がもう1年続く場合に備えるよう業界に警鐘を鳴らしている。

 予約現時点ほぼゼロ

 ワクチン接種は始まっているが、飛行機内で密の状態になったり、クルーズ旅行に参加したり、ビーチサイドの混み合ったバーにたむろできるまで進展するには数カ月を要するとみられる。接種が進めば厳しい措置は終わるはずだが、それがいつになるかは極めて不透明だ。各国政府はしばしば、やみくもに規制を導入し、企業やその潜在的な顧客をいらつかせている。

 地中海に浮かぶイタリア・サルデーニャ島でフェリックス・ホテルズのチェーンを運営するパオロ・マンカ氏は、「あらかじめ計画を進めるに当たり、安全性のガイドラインやプロトコルの観点から、政府の的確な指示が必要だ。観光業にとって、明瞭さの欠如は新型コロナそのものと同様にダメージになっている」と訴える。

 今年は昨年よりも良くなることが期待されているが、クリアするには低いハードルといえる。ギリシャのサントリーニ島に到着したクルーズ船の数は、2019年には600隻近くあったが昨年は3隻にとどまった。欧州委の2月の発表によると、イタリア、スペイン、ギリシャで休日を過ごした非居住者数は7割以上減少。欧州委は「概して観光客の流れが21年に新型コロナ危機以前の水準に完全復活することは期待できない。イタリアでは不透明感が薄れても観光客は少しずつしか戻らず、観光業は経済全体の回復に後れを取るだろう」との見方を示した。

 観光業界の関係者にとって、それは年初2カ月足らずでもう明らかになっている。サルデーニャ島の地元ホテル経営者協会の会長も務めるマンカ氏によると、例年なら長い冬に飽き飽きした人々で今頃は夏季の予約の3割が埋まるところだが、予約はほぼゼロだ。収入の保証がなくても施設の維持費と人件費を負担するオーナーらは難しい状況に置かれている。

 エーゲ海のサントリーニ島にあるメルテミ・ホテルズ・アンド・リゾーツのオーナーで地元ホテル経営者協会の会長を務めるマノリス・カラモレゴス氏は「開業できるかどうか分からないまま、準備をする必要がある。土壇場まで準備しないでおくわけにはいかない」と話す。

 各国政府が業界支援

 ワクチン接種が続く中で見通しは改善し、潜在需要が自然と休暇の予約につながるだろう。だが欧州大陸の各地でワクチンが効かない耐性株が出現すればそれもかなわなくなる恐れがある。

 また、土壇場で予約が急増しても、その恩恵を一様に感じられるわけではない。観光客はギリシャやポルトガルなどより、国内やドライブで行ける範囲の場所を好むと欧州委は分析している。

 南ヨーロッパのホテルの中には、国内の堅調な需要を享受しているところはある。打撃を受けた収入の一部は補われるだろうが、全てというわけではない。ポルトガルのペスタナ・ホテル・グループのホセ・セオトニオ最高経営責任者(CEO)によると、渡航禁止や隔離措置への懸念が続いて外国人客の来訪を阻んでおり、1月の売り上げは国内顧客によるものだという。

 EUによるワクチン接種キャンペーンがゆっくりと、そして論議を呼ぶほど進まないとはいえ、各国政府は観光業を支援する機会に目を向けつつある。ギリシャはイスラエルとの間で既に合意を交わしており、ワクチン接種を終えた人々が自由に旅行できるように、EUが証明書を作成することを望んでいる。ブルームバーグ・ワクチン・トラッカーによると、イスラエルは世界で最も新型コロナのワクチン接種が進んでいる国だ。(ブルームバーグ Paul Tugwell、Flavia Rotondi)

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