海外情勢

穀物急騰で食料高加速 食肉価格押し上げ、食品全般に波及も

 昨年から続く世界的な食料高が、ここへ来てさらに悪化する兆しを見せている。足元では家畜の飼料となる穀物の価格が急騰しており、畜産農家の負担増から食肉への価格転嫁が避けられない。食肉の値上がりは他の食料一般にも波及し、より広い意味でのインフレに発展する恐れもある。

 畜産農家の経営圧迫

 トウモロコシや大豆の国際価格は7年ぶりの高値を記録。この影響で豚や牛、鶏などの飼料費は30%超上昇しており、畜産農家の経営を圧迫している。米タイソン・フーズなどの食肉企業は利益確保に製品価格の引き上げに動いており、その影響がサプライチェーン(供給網)に波及することで、今後数カ月以内に世界各国の牛肉や豚肉、鶏肉の価格上昇となって跳ね返る見通しだ。

 穀物価格の高騰の背景には新型コロナウイルス感染拡大に伴う物流網の混乱に加え、干魃(かんばつ)などの天候不順による収穫量の減少がある。半面、需要も急増している。コモディティ商品の最大の買い手である中国では養豚農家の生産が回復しており、家畜向け飼料の買い入れを過去最高水準まで増やしている。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、1月の世界の食肉価格は4カ月連続で上昇。穀物取引の国際価格の指標となる米国のシカゴ商品取引所では、昨年12月1日以降、今年1月までにトウモロコシ先物価格が29%、大豆は19%上昇した。

 英国の養鶏会社トラディショナル・ノーフォーク・ポールトリーのマーク・ゴートン社長は「食料価格は常に変動するものであり、多少の浮き沈みは問題視されない傾向にある。だが今回のような暴騰になると、ビジネスに甚大な影響を及ぼし始める」と指摘する。

 穀物がこれほど高騰したのは2012年の米国の干魃(かんばつ)以来で、当時も食肉価格が劇的に上昇した。前回と同様、再び食肉を引き金に世界的な食料高に発展する可能性がある。ワクチン接種や大規模な経済刺激策を背景に物価上昇圧力が強まるなか、各国の中央銀行や政策立案者の間で激化しているインフレ対応をめぐる議論の対象にもなりそうだ。

 家畜伝染病も打撃に

 欧州やアジアの一部で広がる鳥インフルエンザなど家畜伝染病も食肉価格を押し上げる可能性がある。アフリカ豚熱(ASF)は中国の養豚産業に壊滅的な打撃を与え、その後も一部の国で感染が拡大している。最近ではフィリピンの豚肉会社が事業撤退を余儀なくされた。

 食料品店の食肉価格は農家が利益悪化に伴い家畜の頭数を削減した後に最も上昇する。ただ、米金融機関コバンクACBのエコノミスト、ウィル・ソーヤー氏によると、頭数削減は時間のかかるプロセスとなるため、飼料費の高騰が消費者物価に反映されるまでにタイムラグがあるという。

 米国の畜産業者は新型コロナ禍による利益減少を背景に、すでに頭数削減を始めている。米政府のデータによると、昨年12月の米国の豚飼養頭数は前年比0.9%減、今年1月の牛飼養頭数は同0.2%減となった。

 米カンザス州畜産協会のエグゼクティブディレクターを務めるクレイトン・ヒューズマン氏は商品市場や天候不順の問題から、農場経営者は事業縮小を余儀なくされる可能性が高いとみており、「今後2~3年以内に供給が逼迫(ひっぱく)するだろう」との見方を示した。(ブルームバーグ Michael Hirtzer、Megan Durisin)

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