海外情勢

「世論を操作していいのは政府だけだ」 中国共産党がアリババを追い詰めるすごい理由 (1/3ページ)

 中国政府がIT大手アリババ・グループに巨額の制裁金を検討している。3月11日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。金額は最大で約8500億円になる恐れもある。ジャーナリストの高口康太氏は「表向きは独占禁止法違反に対する制裁金だが、中国当局の本当の狙いは、政府以外の勢力に世論操作をさせないことだ」という--。

 ■約8500億円の制裁金が検討されているアリババ

 中国EC(電子商取引)大手アリババ・グループに対する逆風が続いている。独占禁止法違反容疑での調査が続くなか、最大で約8500億円という巨額の制裁金が科される可能性も浮上してきた。

 アリババは昨秋以来、多くの問題に直面してきた。まず金融関連企業のアント・グループは11月3日、当局の指導によりIPO(新規株式公開)が延期された。IPO前日の延期発表という前代未聞の事態は世界的な注目を集めた。さらに12月24日には独占禁止法違反容疑で、浙江省杭州市にある本社への立ち入り調査が行われた。

 アリババの張勇(ダニエル・チャン)CEOは2月3日の四半期業績発表会で、この2つの問題について言及し、当局の調査に積極的に協力しているとアピール。改善計画を策定し、当局の認可を得られ次第、ただちに発表すると約束した。すなわち、現時点ではまだ先行きは不透明なままであることを認めた格好だ。

 IPO延期、独占禁止法違反のいずれについても、当局は詳細な“容疑”を明かしてはいない。しかし、張CEOの発言からはアリババはなにがしかの改善計画を策定することが求められており、かつ、その計画は当局の了承を得る必要があることがわかる。

 中国政府はアリババの何を問題視しているのか。何を変えさせようとしているのか。

 ■メディア事業は中国IT企業の生命線に

 さまざまな憶測が飛び交うなか、意外な論点が浮上してきた。それはアリババが保有するメディア、ソーシャルメディアの売却を求める動きだ。

 アリババはEC(電子商取引)を祖業とする企業だが、現在ではクラウドコンピューティング、物流ソリューション、出前代行、口コミサイト、ゲーム、エンターテインメントなど幅広い事業を傘下に擁する。これはアリババだけの特徴ではない。米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が特定の分野に経営資源を集中しつつも事業範囲を全世界に拡大しているのに対し、中国の大手IT企業は地域的には中国本土に集中しつつも、カバーする分野は複数領域に広げている。

 中国IT業界には「トラフィックは王」という言葉がある。新サービスを育てるにはユーザーを集める必要がある。どんなに優れた機能を開発しても、集客で負ければそれで終わりだ。集客のための導線をいかに確保するか、メディアやソーシャルメディアはIT企業にとってきわめて重要なポジションにある。

 だが、アリババは長らくこの分野で劣勢に立たされてきた。

 アリババのライバル企業であるテンセントはQQ、ウィーチャットというソーシャルメディア、メッセージアプリを持つほか、騰訊網というポータルサイトを持つ。一方のアリババは2005年にヤフー中国を買収したものの、ユーザー数を伸ばせずサービスを停止した。また、同社の持つ決済アプリ「アリペイ」のメッセージ機能を強化し、ソーシャルメディア化する構想もあったが、こちらも失敗している。

 自社では有力なメディア、ソーシャルメディアを生み出せなかったアリババは、戦略出資を通じて巻き返しを図る。2013年には中国SNS大手「ウェイボー」に出資。2015年には大手動画配信サイトの優酷土豆を買収。同年、中国大手メディアコングロマリットの上海メディアグループと戦略提携、さらに香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストを買収と影響力を拡大してきた。

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