海外情勢

世界周遊クルーズ完売続々、先行きに光明だが…残る“疑問”も

 新型コロナウイルス対策の隔離とロックダウン(都市封鎖)が始まってから1年以上が経過し、クルーズ旅行ファンからは長期の船旅を懐かしむ声が上がっている。多額の損失を抱えるクルーズ業界だが、出航予定が1年以上先の数カ月間の世界周遊クルーズの高額チケットが飛ぶように売れ始め、先行きに光明が見えてきた。

 喪失機会を取り戻す

 新型コロナが猛威を振るっていた昨年7月、クルーズ船を運航するスイスに運航拠点を置くバイキング・オーシャン・クルーズは今年のクリスマスに出航し、136日で世界を周遊するコースの予約受付を開始。予約は数週間で完売した。新型コロナ第2波の中、12月に受付を開始した同時期出航予定のクルーズも予約は即時完売した。寄港予定の二十数カ国のうち多くが外国人旅行者に対し国境を閉ざす中でのことだ。現在同社は23年出航の世界周遊旅行の企画を急ピッチで進めている。

 米国疾病管理予防センター(CDC)が「クルーズ船旅行は新型コロナ感染リスクが非常に高い」として、乗船しないことを世界中に推奨する中で、クルーズ旅行が次々に完売しているのには、コロナ禍以前からのクルーズ旅行ブームや割安感、クルーズ船利用者の中心層である高齢者にワクチン接種が約束されていることなど多くの要因がある。

 20年3月以来自粛を強いられていることで、簡単には行けないイースター島などを含む世界の目的地を可能な限り多く1度の旅行で観光したいという人たちがチケットの購入に積極的になっているものとみられる。高級旅行のアドバイザー・ネットワーク、バーチュオソの会長兼最高経営責任者(CEO)のマシュー・D・アップチャーチ氏は「繰り延べ需要と生涯でやりたいことの優先順位に変化が生じていることが影響している。昨年失った機会を取り戻したいという熱望や、可能なうちに世界を見ておきたいという強い思いがある」と指摘する。

 一方、大幅な赤字を抱えるクルーズ船運航会社側も収入確保のために出航前の豪華なパーティーや、ビジネスクラス航空運賃、乗船中に使用できる数千ドル分のクーポンを付与している。

 だが、万全の新型コロナ対策をうたう船内で昨年夏から秋にかけ感染がたびたび発生した事例もあり、懸念は払拭できない。こうした懸念が報道される中、バイキングのマーケティング部門エグゼクティブ・バイスプレジデント、リチャード・マーネル氏は「当社の船舶にはPCR検査を頻繁に実施するための検査室や新しい空気清浄システムを装備するなど多くの対策を講じた。乗客は長期間、船内で快適に過ごすことができる」と話す。

 規則かいくぐれるか

 それでも、ワクチン接種が進んでいない国での乗客の上陸には疑問が残る。バイキングの今年12月出航の世界周遊クルーズは27カ国56港を巡る。世界が集団免疫を得るにはこの先何年もかかるとみられる中、同社は他社同様に絶え間なく変更される入国条件や検疫規則をかいくぐり対処する必要がある。アップチャーチ氏は、出航後の航路変更は現実的ではないという。

 運航会社は遠い先に設定した出航日までに、新型コロナの問題が解決されていることを期待するが、万が一各国の国境封鎖が予測より長引けば、予約販売したクルーズは延期を余儀なくされる可能性もある。

 ただ、繰り返したくないのは、新型コロナ感染拡大で運航中の世界旅行クルーズが中断され、乗客が急遽(きゅうきょ)航空便を手配し帰宅、もしくは船内に留め置かれた昨冬の経験だ。アップチャーチ氏は「旅行者はその経験によって『何も保証されない』ことを理解するようになった」と話した。(ブルームバーグ Fran Golden)

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