海外情勢

座礁により滞貨は1日1兆円 巨大コンテナ船「エバーギブン」の離礁難航

 スエズ運河で座礁した正栄汽船(愛媛県今治市)所有の巨大コンテナ船「エバーギブン」の離礁作業が難航し、海運の大動脈の一つである同運河の復旧や座礁の影響が長期化することへの懸念が広がっている。座礁により滞る貨物は1日当たり1兆円規模に上ると試算されている。貨物船の大型化が進む中、今後、同様の事態が頻発するリスクが高まっている。

 船舶引き揚げの精鋭部隊が25日に現地に到着し、全長400メートルのエバーギブンを動かす方法を検討しているが、2012年にイタリア沖で座礁した大型客船「コスタ・コンコルディア」の引き揚げ作業を指揮したニック・スローン氏によると、満潮がピークを迎える28日から29日まで作業を待つ可能性があるという。

 エッフェル塔よりも長いエバーギブンは23日に座礁して運河を塞ぎ、紅海と地中海を往来する船舶が通れなくなった。世界貿易の約12%が同運河を経由しているだけに、復旧に手間取れば、新型コロナウイルス禍による電子商取引(EC)需要の拡大で逼迫(ひっぱく)している世界のサプライチェーン(流通網)には新たな打撃となる。エバーギブンは中国からロッテルダムに向かっていた。

 IHSマークイット傘下のJOCグループで欧州エディターを務めるグレッグ・ノウラー氏は「2日遅れただけでも、サプライチェーンの混乱に拍車がかかり、英国や欧州の企業への貨物配送は遅れる」と述べた。

 世界貿易の拡大に伴いコンテナ船の大きさは過去10年で約2倍となった。そのため、立ち往生した場合の作業は以前に比べ極めて困難になっている。

 スエズ運河をはじめとする主要航路は大型船に対応するために長年にわたって拡幅・拡張されてきたものの、離礁作業には多大な労力を要する。スエズ運河やパナマ運河のほか、ホルムズ海峡や東南アジアのマラッカ海峡など、海上輸送の難所を通過する船舶が増える中、今回の事故は海運業界が抱える大きなリスクを浮き彫りにした。船体の巨大化や水路の混雑に伴い、事故が今後増える恐れがある。

 海事情報会社ロイズリストの概算によると、エバーギブンのの座礁により停止した海上交通量は1日当たり96億ドル(約1兆円)規模に上る。同社は座礁を受け待機中の船舶は約165隻、ブルームバーグは185隻と試算している。

 今回の座礁は原油相場の不安定な値動きに拍車をかけた。原油は今月初めにサウジアラビアの減産を受けて米国産標準油種(WTI)は1バレル=70ドル超に急騰。欧州でのワクチン接種の遅れを背景に今週に入り60ドル近くまで下げたが座礁のニュースを受け再び上昇した。(中国原因“いびつな料金” コンテナ争奪が激化、食料品の輸出入が大混乱)

(ブルームバーグ Salma El Wardany、Mirette Magdy)

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