海外情勢

中韓の牙城切り崩し 欧州がEV電池の供給網をゼロから構築

 欧州が車載電池(バッテリー)の産業育成に力を入れる中、電気自動車(EV)用電池のサプライチェーン(供給網)をゼロから構築する壮大な動きが広がっている。

 中韓の牙城切り崩し

 欧州はEV販売台数で2年連続世界一になると見込まれる。排ガス規制が厳格化され、違反者に罰金が科される中、昨年のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせた販売台数は前年比で2倍強の約130万台と、初めて中国を上回った。独フォルクスワーゲン(VW)やBMW、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏グループPSAが統合したステランティスは新モデル発表や増産を計画し、米フォード・モーターやボルボ・カーズがオール電化を打ち出しており、今年の販売台数は190万台に達する可能性がある。

 そうした中、北欧やドイツ、フランス、英国、ポーランドの有望メーカーが台頭し、バッテリー事業の域内首位を目指す欧州横断的な競争が起こっている。各社は野心的な計画を掲げ、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と韓国のLG化学のバッテリー事業子会社、LGエナジーソリューションの牙城切り崩しを狙う。

 スウェーデンのノースボルト、英国のブリティッシュボルト、ステランティスと仏石油大手トタル傘下の電池子会社サフトによる仏合弁会社オートモーティブ・セル・カンパニー(ACC)など新興企業や、米テスラやVWといった大手が競争に参戦。少なくとも61兆ユーロ(約7900億円)の国家支援やわずか1年で10倍に達した投資計画が、域内での本格競争に拍車をかけている。

 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の予測によると、世界の電池生産で欧州のシェアは昨年の7%から2030年までに31%に上昇する可能性がある。

 最低500ギガワット時量産

 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長(機関間関係・先見性担当)は取材に対し、「われわれは欧州で新たな産業を生み出しつつある。完全に新しいエコシステムだ」とした上で、「投資が実際に進んでいる」と語った。投資は原材料や電池から組み立て、リサイクルまで供給網全体をカバーする。

 独仏やEUの政治指導者らは、域内の主な雇用の受け皿である自動車業界が域外のバッテリー供給元に依存していることをよしとしていない。特に独仏やイタリア、英国など伝統的な自動車生産国は、バッテリー技術で競争力を保ち、生産拠点を維持することに強い意欲を示す。

 ルノー元幹部で、現在コンサルティング会社SIAパートナーズの共同経営者のジャンピエール・コルニュ氏は「全ての国がバッテリー工場を望んでいる」と指摘。欧州全体で27カ所のバッテリー生産計画があり、今後10年間で最低でも500ギガワット時の電池を量産する可能性があると同氏は見積もる。

 VWは先月、独ザルツギッターなど欧州6カ所の電池工場建設と急速充電ステーション網拡大に向けた推定180億ドル(約2兆円)規模の計画を発表し、先行して優位な地位確保に動いた。BNEFによると、計画が順調に進めば、VWとその提携先はCATLに次ぐ世界2位の電池メーカーに浮上するとみられる。

 テスラの元幹部が設立した新興のノースボルトは競合相手の数年先を行っている。同社はVWと140億ドル規模の供給契約を結んでおり、BMWとも取引がある。シェレフテオの工場で年内の量産を準備中だ。創業者のピーター・カールソン最高経営責任者(CEO)は30年までに欧州市場で25%のシェアを確保する考えを示す。

 一方、ブリティッシュボルトは年内にイングランド北東部で約26億ポンド(約4000億円)を投じて工場を着工する計画で、23年までに稼働する可能性がある。(ブルームバーグ Tara Patel、Ewa Krukowska)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus