海外情勢

欧州サッカーが分裂危機 UEFA、スーパーリーグ創設を全面阻止の構え

 欧州最大のスポーツビジネスであるプロサッカーが分裂の危機にひんしている。18日に欧州の12の名門サッカークラブが既存の「欧州チャンピオンズリーグ」(CL)に代わり創設すると発表した「スーパーリーグ」(SL)に対する抗議や批判が相次ぎ、金融機関なども巻き込んだ異例の主導権争いに発展している。(【事実上頓挫か】サッカー「欧州スーパーリーグ」構想、「伝統軽視」想定外だった批判)

 歴史と文化を無視

 強豪チームを中心に創設される新リーグの推進派は、強豪チーム間の試合が頻繁に行われることでより面白い競争が生まれると主張。CLは毎年、本選出場を懸けて勝ち上がらなければ放映権料やスポンサー収入を失う恐れがあるが、新リーグ常設メンバーになることでそうした不確実性は取り除かれる。

 この一方、CLで過去4回優勝したオランダのアヤックス・アムステルダムのような中小チームが勝ち上がったり、大手クラブが一から本戦出場資格を得たりしなければならないなど劇的な展開がなくなるため、サポーター団体や元選手らはクラブ間の試合の歴史と文化を全く無視していると憤っている。

 米金融大手JPモルガン・チェースが総額40億ユーロ(約5236億円)の資金を提供する新リーグ創設をめぐって、サッカーファンや各国政府、欧州サッカー連盟(UEFA)が批判の声を上げている。関係者によると、CLの主催団体のUEFAは対抗策として英投資会社セントリカス・アセット・マネジメントからCL改革に向け60億ユーロの調達を協議している。

 今回の対立は、世界で最も人気のあるサッカーの試合が国際的なビジネスであるとともに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で資金面の影響を受けていることを示している。

 巨額の債務抱えて

 英国やイタリア、スペインのクラブチームは膨大なファン層とともに巨額の債務を抱えており、コロナ禍で1年間の無観客試合を経て、放映権でもっと現金を捻出し、収入を下支えしようとしている。世界的な会計事務所KPMGによれば、これまでに新リーグ参加を表明したチームのうち、数チームを除く全てが昨シーズンは赤字となり、少なくとも8チームは1億ユーロ超の純負債を抱える。(【スペインLのテバス会長】欧州サッカーの新リーグ構想は「消滅」)

 いちかばちかの瀬戸際政策も予想されている。UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長は、新リーグ創設案を「サポーターの顔に唾を吐くものだ」と断じ、必要な全ての措置を講じると言明。新リーグ創設を阻むために、裁判を起こしたり、新リーグ参加チームと所属選手の国際大会出場を禁止したりする方針を示した。

 リバプール大学のフットボールファイナンスの専門家、キーラン・マグワイア氏は「一部の欧州サッカークラブでは財務管理のまずさから、苦境にある債務状況を緩和するために前もって資金を捻出せざるを得ない。その目的を今回の新リーグ創設で達成するか、UEFAからさらなる収入と確実なものを引き出すことになるだろう」と分析する。

 関係者の話では、セントリカスはUEFAへの資金供給をめぐる協議を数カ月間行っている。当初は約42億ユーロの包括案について話し合っていたが、ライバルのスーパーリーグ創設計画を受け、60億ユーロに引き上げられたという。セントリカスは中東やアジアの大口で資金力のある機関とのつながりが深く、ソフトバンクグループのビジョンファンドによる1000億ドル(約10兆8460億円)の資金調達を支援した。(ブルームバーグ David Hellier、Dinesh Nair)

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