海外情勢

隔離用の島で海外旅行気分 シンガポール、癒やしの地に変貌

 かつて検疫隔離用だった孤島が新型コロナウイルスの影響で癒やしの島に変貌-。シンガポールの離島が、海外旅行に気軽に行けない人たちの欲求不満の受け皿となっている。周辺の小島と合わせた月間の訪問者数は、感染拡大前に比べ3倍以上に急増した。

 「いい風が吹き、とてもリラックスできる」。看護師のステフィ・デラクルスさんは友達4人と島を訪れた。売店や飲食店がないため弁当を持参。海で泳ぎおしゃべりして1日を過ごした。新型コロナ流行前は毎年海外旅行をしていたが、当面はお預けだ。初訪問だが「騒がしい街を離れられて幸せ」と笑った。

 島名はセントジョンズ島。市街地の南約6.5キロにある。沖に停泊する巨大タンカーの間を縫ってフェリーで移動すること約30分。ヤシやマングローブの木が茂り、野生のサルが生息する自然豊かな島に到着する。白い砂浜の向こう岸に高層ビル群が見える。

 もともと、ここは検疫と隔離の島だった。19世紀後半、英国の植民地だったシンガポールでコレラ菌が大流行し多数の住民が死亡した。植民地政府は1874年、移民による感染症の流入を防ぐため病院と隔離用施設を建設した。

 中国からの肉体労働者「苦力」やインド人移民、メッカ帰りのイスラム教徒の巡礼者が入境前に留め置かれた。収容数は6000床で当時、世界最大級の規模だった。

 旧日本軍が占領した第2次大戦中は、捕虜収容所に転換。戦後は政治犯の拘置所やアヘン中毒者の治療施設と変遷し、1970年代に今の姿となった。

 ビジネス至上主義の国シンガポールながら、島にはお金を使う場所もない。カラオケ機器を持ち込んだマレー系のグループが歌唱力を競うなど、それぞれのやり方で楽しんでいる。島を管理する国土庁の広報は「(訪問客が多いので)島に職員を派遣し、感染防止策を徹底してもらうようお願いしている」と話した。(シンガポール 共同)

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