海外情勢

アフリカ、接種阻む風説 中国不信を背景に陰謀論 ワクチン懐疑拍車

 アフリカ諸国で新型コロナウイルスワクチン接種の遅れが鮮明になっている。ワクチン提供国である中国に対する不信感などを背景に、さまざまな陰謀論が渦巻き、誤った情報を信じてワクチン接種を拒否する人も多い。

 アフリカは主に、ワクチンを共同購入して途上国にも分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」が提供する英アストラゼネカ製ワクチンに依存している。

 コバックスがサハラ以南のアフリカ諸国に供給したワクチンは約1150万回分。これに加え、ジンバブエ、カメルーン、セネガルなどは中国、ロシア、インドからワクチンの無償供与を受けている。

 政府への反感と並行

 アフリカ全土の政府がワクチン接種を奨励する取り組みを進めている。南アフリカやジンバブエ、ナイジェリアの政治家は率先してワクチンを受け、アフリカで最も人口の多いナイジェリアではキリスト教とイスラム教の指導者らがともに公の場でワクチンを接種した。

 コートジボワールでは政府がフェイスブックライブなどソーシャルメディアで宣伝、ジンバブエの保健省は市民の接種会場行きを促すために、ツイッターのアニメ動画を活用している。

 それでも接種が進まない背景には、自国政府への信頼欠如やワクチンに対する根強い不信感、ソーシャルメディア上の誤った情報でワクチン懐疑論に拍車がかかっていることがある。ジンバブエの中国製ワクチンに関する疑惑、コートジボワールでの「新型コロナは外国の当事者の策略によるもの」だという陰謀説の流布、ソマリアのイスラム系過激組織アル・シャバブによる「アストラゼネカの実験材料にされている」との警告など、ワクチン懐疑論はさまざまだ。

 ジンバブエではワクチン供給元の中国が、接種を阻む障害になっている。1970年代の解放戦争を経て英国からの独立以来41年間政権を握ってきた与党は中国政府と親密な関係にあるため、政府への反感と並行して、反中感情が高まっているからだ。

 20万人が加盟するジンバブエの教職員組合(PTUZ)の代表は「教師らは不安で疑問に思っている。中国製ワクチンならなおさらだ。接種希望者はほとんどいない」と話す。PTUZの組合員はワクチンの初回接種対象になっている。

 同国に到着した163万5000回分のワクチンのうち、投与されたのは31万1900回余りで、3月10日は1日の接種回数が140に落ち込んだ。

 コートジボワール最大の都市、アビジャンのスポーツ複合施設に設置された白いワクチン接種用のテントで人々の到着を待つ看護師は「ワクチンをめぐる懸念や疑惑は多い。複数の女性が、接種すると不妊症になるのかと質問する。アフリカには子供の数が多すぎるから人口を抑制する方法だと信じているのだ」と明かす。

 「新型コロナはエリート層が利益を得るための策略だ」との風説もある。カメルーンの首都ヤウンデの大学院生は「国際機関と援助国が財政支援投入の意向を表明し始めると、カメルーンが最初の感染例を発表した。これは金もうけの策略だ」と強調する。

 最前線では楽観せず

 2019年の発生以来、新型コロナは世界で300万人以上の命を奪ってきた。地球上で最も貧しい地域の一部にこのウイルスの負担はますます重くのしかかっている。

 4月末時点でのアフリカの死者数は12万人強と米国単独の死者数の約5分の1にとどまるなど、公式な数字は比較的少ないが、そのことは助けにはならない。検査はわずかしか行われておらず、正確な記録保持はまれだ。大陸随一の発展国である南アフリカでは、過剰死亡者数が公式集計の約5万4000人の3倍に上り、科学者らはそのほとんどが新型コロナ感染症によるものだと指摘している。

 アフリカ大陸の保健医療の指導者らは、ワクチンの展開が最終的にはうまくいくと自信を示している。アフリカ疾病対策センター(アフリカCDC)のヌケンガソン所長は3月の会見で「不安要素があってそれが誤った情報につながり、国民にワクチンを受け入れるのをためらわせている可能性がある。ワクチン接種に伴い、この傾向は変化する。知っている人がワクチンを受けている様子を見てワクチンを接種したいと思う人が増えることを願っている」と語った。

 ただ最前線の医療従事者の多くは楽観的とはいえない。コートジボワール北部の町オディエンネの看護師は「中には文字が読めず、ニュースに興味がない人がいて、自分たちにワクチンを接種しないように言う友人や家族の話の方を聞く。新型コロナウイルスの存在を信じない人もいる」と話している。(ブルームバーグ Antony Sguazzin、Katarina Hoije)

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