海外情勢

5分足らずで50点…食料品大手クローガーがEC、ロボ倉庫で反撃

 米食料品チェーン大手のクローガーが後れを取っていた電子商取引(EC)で勝負に出ている。ロドニー・マクマレン最高経営責任者(CEO)の計画の鍵を握るのは、約3年前に株式を取得したオンライン食品販売、英オカド・グループの技術を駆使した「ロボット倉庫」だ。クローガーはオハイオ州モンローのシンシナティ郊外に新たなフルフィルメントセンター(物流倉庫)を立ち上げた。

 5分足らずで50点

 敷地面積37万5000平方フィート(約3万4840平方メートル)の同物流倉庫では、食器洗浄機ほどの大きさのロボットが碁盤の目状の軌道上を行き来する。21段に積み重ねられた箱からシリアルや炭酸飲料、その他2万8000のアイテムを取り出し、ピッキングステーションまで運ぶのがロボットの役目だ。あとは人が仕分けして顧客の家に届ける。ここでは5分足らずで注文品50点をピッキングでき、従業員が店舗から商品を取ってくるより格段に速い。

 フル稼働した暁には、最大1000台のロボットがピッキングステーションに商品を運び、一度に複数の顧客向けの袋詰めが可能となる。取扱量は約20の実店舗の売り上げに匹敵する見通しだ。配送料は9.95ドル(約1080円)からで、最終的にはその時の配送の需要、事前注文の時期、顧客の信頼度によって変わる。

 マクマレンCEOは3月の投資家向けイベントで「社会は新たなデジタル時代へ突入した。クローガーもそうだ」と述べ、2023年末までに同社の100億ドルのネット売上高を2倍にする決意を示した。また、「われわれの前にはまだ大きなチャンスがある」と強調。4月14日には記者団と電話会議を行った。ただ不明な点が多く残る中、同社の大規模な計画に疑問の声が上がる。

 クレディスイスのアナリスト、ロバート・モスコー氏は「これは実証されていない極めて大きな賭けだ。自分ならもっと柔軟で資本がかからないやり方を選ぶ。分からないことが多い」と指摘する。

 ウォルマートやアルバートソンズ、アホールド・デレーズなど競合他社は店舗に併設、あるいは近場に設置する形で「マイクロフィルフルメント」センターと呼ばれるもっと簡単な方法を取り入れている。マイクロフィルフルメントはより安く迅速に建設でき、顧客の家のそばに設置されることで、ゆくゆくは注文品をピッキングする人員の多くに取って代わる可能性がある。アナリストらからは、ネット注文を処理する上で、最も役立つ方法である可能性が高いとみられている。

 ウォルマートは現在、ネット注文のピッキングと梱包(こんぽう)だけで17万人を雇用しており、マイクロフルフィルメントセンターを100カ所建設する計画。今後さらに増える公算が大きい。

 実店舗の減収要因

 一方、クローガーの「ロボット倉庫」では、最初の数カ所を建設する際にそれぞれ5000万ドル以上の費用を要する。同社は商品の袋詰め作業員やモンローの物流倉庫だけで400人の配送トランクの運転手の人件費に加え、オカドへの技術使用料を支払う必要がある。クレディ・スイスの見積もりでは、ロボット倉庫の運営全体を下支えするロボットとソフトウエアへの支払い手数料は売上高の5%相当に上る可能性がある。また、ロボット倉庫が処理する受注分は、実店舗での売り上げを減らすことになる。現在、店舗での売り上げの方が利益が出ており、今後4年は物流倉庫と実店舗の利ざや差をならすことができないとクローガーはみる。

 建設の遅れも進展を妨げている。今頃20カ所で物流倉庫を建設しているはずだったが、11カ所の着工にとどまる。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前にクローガーはウォルマートやアマゾン・コム、高所得者向けの地元チェーンや格安スーパーのアルディなどに市場シェアを奪われていた。感染拡大で自炊する米国民が増え、クローガーは昨年度は業界並みの増収率を確保。だが個人消費の飲食店への回帰が見込まれ、UBSは1兆4000億ドル規模の生鮮食品部門の売上高が21年に過去20年余りで初めて減少すると見込む。前途が一段と厳しさを増す中、マクマレン氏の賭けは成功を収める必要がある。

 だがクレディ・スイスのモスコー氏は「オカドのモデルが米国の市場で収益性の高い運用ができるかどうか分からない」とコメント。同氏はクローガーの投資回収に8年相当かかると見積もり、「クローガーとオカドが新たな市場で影響を及ぼすことはほぼ不可能だ」とあくまでも懐疑的だ。

 一方、米コンサルティング会社のブリック・ミーツ・クリックによると、オカドのロボットが一旦稼働すれば、生産性は典型的なマイクロフルフィルメントセンターで行われるピッキングの3倍、精度99%での動作が可能だという。また予想通り生鮮食品販売におけるネット注文のシェアが増え続ければ、想定を上回る取扱量とコスト削減の組み合わせにより、クローガーはより迅速に投資を回収できるようになる。

 それこそがマクマレンCEOの期待している点だ。ただ一筋縄ではいかないかもしれない。(ブルームバーグ Matthew Boyle、Kevin Miller)

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